枕草子を現代語訳したり考えたりしてみる

清少納言の枕草子を読んでいます。自分なりに現代語訳したり、解説したり、感想を書いています。専門家ではないので間違っていたらすみません。ご指摘・ご教授いただけると幸いです。

よろこび奏するこそ

 昇進のお礼を天皇に申し上げるのはイカしてます。下襲(したがさね)の裾を長めに引っぱり出して、天皇の方を向いて立っているのがね。拝礼して踊りをくるくると舞っているのも素敵です。


----------訳者の戯言---------

「よろこび」を「奏す」る、って何ぞや?と、いきなりよくわかりません。
前にも出てきましたが、「奏す」っていうのは天皇に申し上げること、「啓す」っていうのは皇后とか皇太子に申し上げることなんですね。これは決まりだから、まあ、わかりますけど。
「よろこび」ですからね、意味、広すぎるしなーとは思います。が、そこは文脈から読み取れってことですね。というか、天皇に「奏す」る「よろこび」的な事は「昇進のお礼」なんでしょうね、当時は普通に考えたら。

たとえば現代でも、「お悔み」を「申し上げる」のは、「亡くなった方の親族に慰めの言葉をかける」意味であって、「悔やんでること」をただ「申し上げる」だけではないですね。
ま、それと似たようなことなんでしょう。慣用的にこう言う、と。

そう考えると「後ろをまかせて」も広いですね。「下襲の裾を長く引いて」ということらしいです。
「後ろ」というのは、着物の裾とか、また、下襲(したがさね)の、後ろに垂れてる部分のことを言うらしいですね。
下襲」というのは、コトバンクとかで見ていると、今で言うとシャツ的なものですね。上着の下に着るやつですと。絵とか見ても後ろがすごく長いです。
ただ、枕草子が書かれた頃はまだそんなに長くなかったらしい。位が上の人ほど長かったみたいで、大臣クラスでも33cmとかだったのが13世紀頃には3mくらいになったらしいです。
長すぎやろ!と思いますけどね。

ちなみに「まかせ」というのは「まかす」の連用形ですが、漢字で書くと「任す」ではなく、「引す」なんですね。これで「まかす」と読むこと自体、普通はないですからね。ひす?ひきす?いんす?ですかぁ?っていうレベルですから、私。

「引す(まかす)」というのは、池とか田んぼなんかに、水を引く、引き入れるということらしいです、そもそもは。

実は、前に読んだ徒然草(第五十一段)でも「まかす」という言葉は出てきまして、その時は水を引くという意味そのままだったので、まだわかりやすかったんです。

で、今回もっと詳しく調べていたら、「まかす」は「引す」だけでなく「漑す」とも書くらしい、ということもわかりました。実際、こんな漢字も初めて見ましたね。人によっては一生見ないでしょう。
私も徒然草枕草子を読んでなかったら、見ることもないまま死んでたでしょうね。

で、本題です。
「まかして」ですが、上にも書いた「引き入れ」転じて、長く引き伸ばして、とか、長めに引っぱりだして、くらいの感じでしょうかね。
三月三日は」の段でも、裾出しルックが描かれてましたけど、裾出すの好きですよね、昔も。
現代もまあ、カジュアルではシャツを出しますけど、フォーマルでは絶対に出しませんからね。

原文を読むと、天皇の前で、こんな時(昇進のお礼を言っている時)に踊り騒ぐのはいかがなものか?と一瞬思いますよね。不謹慎でしょうが、と。

けど、当時のはそういう作法なんですね。
Weblioを見てますと、「舞踏す」とは「朝廷などでの朝賀・即位・節会(せちえ)・叙位・任官などの際の拝礼の作法の一つ」と書かれていて、そのやり方として「二度礼拝して笏を置き、立って身を左右左とひねり、座って左右左とひねり、笏を取って礼拝し、立ってさらに二度礼拝する」ということです。
しかしやはり動きはヘンです。クネクネダンスですね。
騒ぐ、というのはいろいろ意味がありますけど、ここではくるくる、スムーズ&スピーディに舞うということでしょうね。

「拝し舞踏し騒ぐよ」から想像すると、場所は偉い人のところ、裾出しファッションで昇進のお礼、しかもそこでダンシング。
ダンスは、クネクネ系からストリート系に移り、ロボットダンスとか、ムーンウォークとかヘッドスピンとかしてほしいです。もちろん、そんなことしないですけど、やってくれたらめっちゃウケるんですけどね。


【原文】

よろこび奏するこそをかしけれ。後ろをまかせて、御前の方に向ひて立てるを。拝し舞踏し騒ぐよ。