宮仕へする人々の出で集まりて
宮仕えしてる女房たちが退出して集まってきて、それぞれが仕える主のことをお褒め申し上げて、中宮の御殿の様子や高貴な殿方のことなんかを互いに語り合っているのを、その家の主人として聞くのは面白いわ。
家が広く、きれいにしてあって、自分の親族はもちろん、語り合って仲の良い人とかも、宮仕えしてる人をそれぞれの部屋に住まわせておきたいって思われるの。
何かの折には一カ所に集まって座って、おしゃべりをして、誰かの詠んだ歌についてあれこれ話し合って、誰かが手紙なんかを持って来たらみんなで一緒に見て返事を書き、また、親しくやって来る男の人もある時には、こざっぱりと部屋の飾りつけをして、雨なんかが降って帰れなかった場合もいかしたおもてなしをして、女房たちが宮中に参上する時にはそのためにお世話をして、思うようにいい感じにして出仕させたいものだわ。
高貴なお方がいらっしゃるご様子なんかがすごく知りたくなってしまうのは、よからぬ気持ちなのかしらね。
----------訳者の戯言---------
前段とはうって変わって、単語や出典や有職故実やら人名やら、調べるものがあまりなく、私にとっては珍しい章段です。
宮仕えをしている女房たちが里帰りするというか、暇を貰って宮中から下って集まる、ということをしていたようですね。清少納言の家にも集まってくることがあったのでしょう。
やはり自分が仕えてる主君は褒めるんですね。本心かどうかはわかりませんけど。
愚痴も言いたいところでしょうけど、そこまでは言わないんでしょう。情報交換や意見交換をしたり。手紙の返事を一緒に考えるなどというのは余計なお世話だと思うんですけどね。
男が通って来たらもてなすんですね、もはや秘め事ではないのでしょうか。
で、また出仕するときはフォローしてあげるという、相互扶助というか、そういうことがあったんですね。
高貴な人がどういう様子なのか知りたいのは、悪いことではないと思いますよ。皇室のこととか英王室のこととか。みんな興味ありますものね。普段何着ているのだろうとか、何を食べていらっしゃるのだろうとか。
それとは全然関係ないけど、「やんごとなき一族」はツッコミどころ多かったなぁ。
【原文】
宮仕へする人々の出で集まりて、おのが君々の御ことめできこえ、宮の内、殿ばらの事ども、かたみに語りあはせたるを、その家主(あるじ)にて聞くこそをかしけれ。
家ひろく、清げにて、わが親族(しぞく)はさらなり、うち語らひなどする人も、宮仕へ人を方々に据ゑてこそあらせまほしけれ。さべき折はひとところに集まりゐて、物語し、人のよみたりし歌、何くれと語りあはせて、人の文など持て来るも、もろともに見、返りごと書き、またむつましう来る人もあるは、清げにうちしつらひて、雨など降りてえ帰らぬも、をかしうもてなし、参らむ折は、そのこと見入れ、思はむさまにして出だし出でなどせばや。
よき人のおはしますありさまなどのいとゆかしきこそ、けしからぬ心にや。