枕草子を現代語訳したり考えたりしてみる

清少納言の枕草子を読んでいます。自分なりに現代語訳したり、解説したり、感想を書いています。専門家ではないので間違っていたらすみません。ご指摘・ご教授いただけると幸いです。私自身が読む、という前提ですので、初心者向けであって、何よりもわかりやすい、ということを意識しているのですがいかがでしょうか。最初から読みたい!という奇特な方は「(PC版)リンク」から移動してください。また、検索窓に各段の冒頭部分や文中のワードを入れて検索していただくと、任意の段をご覧いただけると思います(たぶん)。

関白殿、二月二十一日に⑩ ~さて、八九日のほどにまかづるを~

 その後、八日か九日の頃に私は里に戻ることにしたけど、定子さまは「もう少し供養の日が近づいてからでいいんじゃ…」なんておっしゃって。でも、私は退出して帰っちゃったの。
 いつもよりすごくのどかに日が差してるお昼頃、「花の心は開けないの? どうなの? どうなのかしら?」っていうお言葉のお手紙をいただいたものだから、「秋はまだまだ先ですけど、魂は一晩に九回参上するって気持ちがしてるんです」って私はご返事申し上げたのね。


----------訳者の戯言---------

ここのやりとりに出てくる「花の心開く」「夜に九たび升る」というのは白居易(白楽天)の白氏文集にある「長相思」という漢詩の中から、それぞれ一節を取ってきてやり取りをしているようです。下の「二月東風來 草坼花心開」から引用して手紙を書いてきた定子に、清少納言が「思君秋夜長 一夜魂九升」で返すというワザですね。時はちょうど二月です。そして、「秋はまだまだ先ですけれど」と断った上で、思いを伝えたというね。こういうのがスッと出て来て返せるのは、たしかに大したものだと思います。

長相思

九月西風興 月冷霜華凝
思君秋夜長 一夜魂九升
二月東風來 草坼花心開
思君春日遲 一夜腸九回
(後略)

九月西風興り 月冷ややかにして霜華凝る
君を思ひて秋夜長く 一夜にして魂九たび升(のぼ)る
二月東風来たり 草坼(ほころび)て花の心開く
君を思ひて春日遲く 一夜にして腸九たび廻す

さすがに元ネタをわかってないと返せませんからねー。

余談ですが先日、ある方に「クリーピーナッツと見取り図の見分け方を発見したよ」と言いましたら、「クリピーナッツ? 何それ? 知らん」と返されまして、せっかくのボケが台無しになってしまったのでした。

中宮・定子と清少納言との間では、クリーピーナッツと見取り図が微妙に似ていることが共有されていたということですね。いや、違いますけど。ものの喩えとしてはそういうことです。

というわけで、実家に帰った清少納言はその後どうするのでしょうか。⑪に続きます。


【原文】

 さて、八九日のほどにまかづるを、「今少し近うなりてを」など仰せらるれど、出でぬ。いみじう、常よりものどかに照りたる昼つ方、「花の心開けざるや。いかに、いかに」とのたまはせたれば、「秋はまだしく侍れど、夜(よ)に九度(ここのたび)のぼる心地なむし侍る」と聞こえさせつ。