枕草子を現代語訳したり考えたりしてみる

清少納言の枕草子を読んでいます。自分なりに現代語訳したり、解説したり、感想を書いています。専門家ではないので間違っていたらすみません。ご指摘・ご教授いただけると幸いです。私自身が読む、という前提ですので、初心者向けであって、何よりもわかりやすい、ということを意識しているのですがいかがでしょうか。最初から読みたい!という奇特な方は「(PC版)リンク」から移動してください。また、検索窓に各段の冒頭部分や文中のワードを入れて検索していただくと、任意の段をご覧いただけると思います(たぶん)。

故殿の御ために② ~わざと呼びも出で~

 わざわざ呼び出したりして、会う度に「何で私とマジで親密に語り合ってくださらないのかな? さすがに私を嫌いだと思ってるわけじゃない、ってことはわかってるんだけど、すごく疑問に思ってるんだ。こんなに何年も経ってる懇意の知人同士が、よそよそしいままの関係で終わるってことないんじゃない? 私が殿上なんかに日中いないことになったら、あなたとのこと、何を思い出にしたらいいんだろうよね?」っておっしゃるから、「もちろん、それは難しいことじゃないんだけど、もしそうなっちゃった後には、あなたをお褒めすることができなくなるのがヤなんですよね。帝の御前なんかでも、自分の役目だと思ってあなたをお褒め申し上げてるのに、どうしてそんな関係になっちゃうことなんてできます?? ただ、私のことをお想い下さってればうれしいんです。だって、もしそんな仲になっちゃったら、バツが悪くって、自分の悪い心も前面に出てきちゃって、あなたのコト、良く言うこともできにくくなっちゃうでしょうからね!」って言ったら、「どうしてだよ?? それだけ親密な人が、他人の評判以上に褒めるケースだってあるだろうにさ!!」っておっしゃるもんだから、「それ、憎ったらしく思わなけりゃいいんですけどね。私は、男でも女でも、親密な関係の人を大切に思って、贔屓にしたり、褒めたり、人がちょっとでも悪いことを言ったら腹を立てたりするのって、情けなく思えるのよ」って言ったら、「頼りがい無いよなあ」っておっしゃるの、すごくおもしろいわね。

 

----------訳者の戯言---------

やはり、①からの流れから、頭の中将、藤原斉信との関係を描きました、清少納言
藤原斉信、グイグイ来てますが、彼女的には、いやいや、そういう関係になっちゃうと正当な評価として、あなたのことを褒めることもできなくなるしー。とかわします。

意外とマジメというか、こんなモテモテ男前のエリートに言い寄られて、どうしてそれほどまでにクールに、スクエアに対応できるのか?清少納言。プレイボーイに弄ばれるのを嫌ったのか、実は男性としては好みではなかったのか、いろいろ想像はできますが、書いてるのは後日なわけですから、やはり結果的に何も無かったのだろうと私は推察します。
もったいない。もったいないオバケ(死語)が出ますぞ。

よくあるのが、会社とかで自分の彼女(愛人)とかを優遇するオヤジ。あ、昭和のドラマですね。まあ、そこまでじゃなくても、そういう関係になると、感情が邪魔をして公平な評価ができにくくなるの、やっぱよくないんじゃね。って言ったら、「いやー、それ、キミ的には認められないんだー」って言うしかない男。けどま、そんな反応の彼もおもしろいんだけどね、と余裕です。

そう、この段は乙女じゃなくて、あえてクールを装うキャリア女性という役どころを選ぶ清少納言、と言うのが妥当かと思います。


【原文】

 わざと呼びも出で、逢ふ所ごとにては、「などか、まろを、まことに近く語らひ給はぬ。さすがににくしと思ひたるにはあらずと知りたるを、いとあやしくなむおぼゆる。かばかり年ごろになりぬる得意の、うとくてやむはなし。殿上などに明暮なき折もあらば、何事をか思ひ出にせむ」とのたまへば、「さらなり。かたかるべきことにもあらぬを、さもあらむ後には、えほめたてまつらざらむが口惜しきなり。上の御前などにても、やくとあづかりて、ほめ聞こゆるにいかでか。ただおぼせかし。かたはらいたく、心の鬼出で来て、言ひにくくなり侍りなむ」といへば、「などて。さる人をしもこそ、よそ目(<よそ>め)より他(ほか)にほむるたぐひあれ」とのたまへば、「それがにくからずおぼえばこそあらめ。男も女も、けぢかき人思ひ、方(かた)引き、褒め、人のいささかあしきことなどいへば腹立ちなどするが、わびしうおぼゆるなり」といへば、「たのもしげなのことや」とのたまふも、いとをかし。

 

新版 枕草子 下巻 現代語訳付き (角川ソフィア文庫 (SP33))