枕草子を現代語訳したり考えたりしてみる

清少納言の枕草子を読んでいます。自分なりに現代語訳したり、解説したり、感想を書いています。専門家ではないので間違っていたらすみません。ご指摘・ご教授いただけると幸いです。私自身が読む、という前提ですので、「わかりやすい」「初心者向け」となっているとは思いますがいかがでしょうか。最初から読みたい!という奇特な方は「リンク」から移動してください。また、検索窓に各段の冒頭部分や文中のワードを入れて検索していただくと、任意の段をご覧いただけると思います(たぶん)。

懸想人にて来たるは

 恋人として来るのは言うまでもなく、単におしゃべりをするだけの人でも、また、そんなでもなく、ただたまたま来ただけの人であっても、簾の中に他の女子たちもいっぱいいておしゃべりしてるところに入ってきて、座って、すぐには帰りそうもないとき、お供の男の子なんかが、「どうなってるんだろ?」って、覗き込んで様子を見て、「斧の柄もボロボロになって無くなっちゃうぐらい(時間かかるん)じゃね?」なんて、めっちゃ面倒臭そうに言って、大あくびをしてね、バレないと思って言ったつもりなんだろうけど、「あぁ、つれぇなー。煩悩苦悩だわ。『夜』が『夜中』になっちゃうじゃんよー」って言うの、ホントめちゃくちゃ憎ったらしいわね。で、そんなこと言う本人のことは、別に何とも思わないんだけど、中に入って座ってる主人のほうを、今までステキだなって、見たり、聞いたりしてた気持ちが無くなっちゃうような気がするの。

 また、それとはっきり言葉を口には出さないで、「あーあぁ」ってカン高くうめき声を上げるのも、「下行く水の」っていう気持ちなんかなー、ってお気の毒orz
 衝立や垣根のところで、「雨降るんだろうかなぁ」なんて、聞えよがしに言うのもすっごく気分悪いわね。

 でも、すごく身分の高い人のお供なんかはそんなことはなくて。名家の若君たちなんかのお供の人はいいの。でもそれより下の場合はみんな、あんな風に、問題アリなのよ。大勢いるスタッフの中からは、従者マインドをしっかり見極めて、連れて行きたいものだわね。


----------訳者の戯言---------

「下行く水の」というのは、「古今和歌六帖」という歌集にある次の和歌からとっています。

心には下行く水のわきかへり 言はで思ふぞ言ふにまされる
(私の心の中には、表面からは見えない地下水がわき返ってて、口に出さないけど、あなたのことを思ってるの。その思いは口に出して言うよりずっと優っているんですよ)

なかなか優美な、奥ゆかしい雰囲気の歌ですが、今回はあえてこれを出してきたわけですね。

「透垣(すいがい)」というのは、板または竹で、間を透かして作った垣根のこと、だそうです。

本題はスタッフ教育の問題でしょうか。
ビジネスシーンに例えるとスタッフの教育がうまくできていないマネージャー、あるいは経営者への苦言と提言のようなものとも取れます。

突き詰めると、こういう問題は、主従間、あるいは上司部下の間であれ同僚であれ、信頼関係が構築できているかどうかという点に帰結します。
が、その一方で、そうした信頼関係構築のベースには、ワークスタイルや賃金、もちろんコンプライアンス教育等も含め、結局は各々の資質だけでなく雇用環境、労働環境が重要な要素となることがわかります。ですから、清少納言がそのへんのことを心得て、「いとよき人の御供人などはさもなし」と、高貴な家=一流組織たる環境にいるスタッフはしっかりしてる、と述べているのだとしたら、ゼネラリストとしてかなり秀逸だと言えるでしょう。

くら寿司セブンイレブンすき家ビッグエコーetc.最近のSNS炎上についても、バイトテロとかバカッターなどというワードが先行してしまいがちですが、「最低賃金に近い時給で雇用していること」のリスクを踏まえた上でのマネージメントを含め、より良い労働環境をアグレッシブに構築すべきところにきているのは間違いありません。とまでは、清少納言も思ってはいないでしょうけどね。

ま、この問題、もっと考えると、AIやらロボットやら外国人労働者やら産業構造の変化やら、とてつもないことになるので、これ以上、ここでは考えないことにしましょう。難しいことは、政治家や学者に任せて、私などは平安時代のことで、あれやこれや言ってる方が幸せなのかもしれません。


【原文】

 懸想人にて来たるはいふべきにもあらず、ただうち語らふも、またさしもあらねど、おのづから来などもする人の、簾(す)の内に人々あまたありて物などいふに、ゐ入りてとみも帰りげもなきを、供なる男童(をのこわらは)など、とかくさしのぞき、けしき見るに、「斧の柄も朽ちぬべきなめり」と、いとむつかしかめれば、長やかにうちあくびて、ひそかに思ひていふらめど、「あな、わびし。煩悩苦悩かな。夜は夜中になりぬらむかし」と言ひたる、いみじう心づきなし。かのいふ者は、ともかくもおぼえず、このゐたる人こそ、をかしと見え聞こえつることも失するやうにおぼゆれ。

 また、さいと色に出でてはえ言はず、「あな」と高やかにうち言ひ、うめきたるも、「下行く水の」といとほし。

 立蔀、透垣などのもとにて、「雨降りぬべし」など聞こえごつも、いとにくし。いとよき人の御供人などはさもなし。君達などのほどはよろし。それより下れる際はみなさやうにぞある。あまたあらむ中にも、心ばへ見てぞ率てありかまほしき。

 

枕草子 ─まんがで読破─

枕草子 ─まんがで読破─