枕草子を現代語訳したり考えたりしてみる

清少納言の枕草子を読んでいます。自分なりに現代語訳したり、解説したり、感想を書いています。専門家ではないので間違っていたらすみません。ご指摘・ご教授いただけると幸いです。私自身が読む、という前提ですので、「わかりやすい」「初心者向け」となっているとは思いますがいかがでしょうか。最初から読みたい!という奇特な方は「リンク」から移動してください。また、検索窓に各段の冒頭部分や文中のワードを入れて検索していただくと、任意の段をご覧いただけると思います(たぶん)。

説経の講師は② ~さはあらで~

 そんなのとは違って、講師が登場して少し経った頃、先導の声が少しして、車を停めて降りた人が、蝉の羽よりも軽そうな直衣、指貫、生絹の単衣なんかを着てたり、狩衣の姿だったり、そんな感じの若くてスラッとスマートな3、4人が、また同じ人数くらいのお供を引き連れて会場の中に入ってきて。そうしたら、最初からいた参加者たちもちょっと身体を動かして場所を空けて、高座のすぐ下に近い柱のあたりに座らせてあげたんだけど、そのコたちがかすかに数珠を押し揉みなどしながら説教を聞いてるもんだから、講師も晴れがましい気持ちになったのかな、どうやって語り伝えようか!ってお説経に力が入りだしたのよね。

 説経を聞く時も転げまわったり騒いだりして、額を床につけて大げさに礼拝するようなこともなく、ちょうどいいタイミングで席を立って出て行くときに、牛車の方を見ながら仲間同士で話してるのも、いったい何をお話ししてるんだろ?って惹かれちゃう。
 知ってる人は、やっぱ素敵!って思うし、知らない人は、いったい誰?あの人?なんて思いをめぐらして、人びとの視線釘付けで見送られるのが、これまたいかしてるの。


----------訳者の戯言---------

直衣(のうし)っていうのは一般的な衣のことで、公家の平常服、だそうです。フォーマルなものやオフィシャルなものではない、と考えていいと思います。が、実は形は所謂ビジネスウェアの「衣冠」とさほど変わりません。今で言うと、テーラードジャケットだけど、スーツではない、くらいのオフィスカジュアル的なスタイルといっていいかもしれませんね。

狩衣(かりぎぬ)は文字通り「狩り」をするときに使っていた服です。動きやすいので、これが公家の普段着となりました。スポーツウェアとかワークウェア起源のカジュアル服ですね。今で言うと、ポロシャツとかトレーナーとかスニーカー、ジーンズなんかの感じでしょうか。カジュアルファッションっていうのは、古今東西そういうものなんだなということがわかります。

直衣、指貫、生絹の単衣、狩衣と、いろいろ書くことで、まさに今に例えれば、トラッド系ブレザースタイルの子もいれば、ストリート系、キレイめカジュアルだったり、ラフなスポーツスタイルだったり、とでも言うかのように、男子たちのおしゃれのバラエティ感を表現していますね。

さて、この段この部分は、前半disりまくってたのから一転して、イケメンでオシャレな男のコたちの登場で、会場のみんなも、講師までもが、テンション上がってる様子ですね。何より清少納言自身、かなり興奮したようです。(当時清少納言は30代前半くらいです)やっぱ女子はカワイイ男のコが好きなんですね、今も昔も。


【原文】

 さはあらで、講師ゐてしばしあるほどに、前駆少し追はする車とどめておるる人、蝉の羽よりも軽げなる直衣、指貫、生絹の単衣など着たるも、狩衣の姿なるも、さやうにて、わかう細やかなる三四人ばかり、侍の者、またさばかりして入れば、はじめゐたる人々も少しうち身じろぎ、くつろい、高座のもと近き柱もとにすゑつれば、かすかに数珠おしもみなどして聴きゐたるを、講師もはえばえしくおぼゆるなるべし、いかで語りつたふばかりと説き出でたなり。

 聴聞すなどたふれさわぎ、額づくほどにもならで、よきほどに立ち出づとて、車どもかたなど見おこせて、我どちいふことも、何事ならむとおぼゆ。見知りたる人は、をかしと思ふ、見知らぬは、たれならむ、それにやなど思ひやり、目をつけて見送らるるこそをかしけれ。


検:説経の講師は

 

こころきらきら枕草子 ~笑って恋して清少納言

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