同じことなんだけど、聞いた感じが違うもの。お坊さんの言葉。男の人の言葉。女子の言葉。身分の低い人の言葉には必ず余計なひと言がついてくるの。(言葉は足りないくらいが、感じいいのにね)
----------訳者の戯言---------
まあ、前半部分は当たり前って言えば当たり前なんですが。
しかし、昔の人の人権感覚というか、身分差別意識というのは現代とは程遠くて、これを今の感覚で捉えると違和感しかないんですが、当時は当たり前だったわけで。ポリコレなんていう視点なんか到底ないわけだし、今後もたぶんいっぱい出てくると思いますけど、とにかく身分の低い者には容赦ないです。
清少納言なんて、当時の教養人の代表の一人なんでしょうけど、それでもこれが常識だったんですよね。
政治家だって、官僚だってそうだったし、神官や僧侶でさえ、そういうヒエラルキー社会の中で、それを肯定しつつ生きてたわけです。
まあ、毎回いちいちひっかかってられないし、そういうこと前提で読まないといけない、と、最初のうちにこれは書いておきましょう。現代に生きる私は肯定しないし、違和感しかないですけどね、と。
例えば平安時代に、今みたいなポリコレ上等、アンチ差別主義者みたいな著述家がいたらかなり面白かったんだろうとは思います。けど、きっと迫害されるか、無視されるか、いずれにしろ淘汰されたでしょうね。
【原文】
同じことなれども聞き耳ことなるもの 法師のことば。男のことば。女のことば。下衆のことばには、必ず文字あまりたり。(足らぬこそをかしけれ)