心もとなきもの④ ~また、とみにていり炭おこすも~
また、急いでいり炭を熾(おこ)すのもすごく時間がかかるわね。人からもらった歌の返歌を早くしなくちゃいけないのに、うまく詠めない時もじれったいわ。恋人同士なんかだとそれほど急がなくてもいいかもだけど、自ずとこれまた、急がないといけないケースだってあるの。まして、女同士だって普通にやりとりしてる時は、早いほうがいい!ってばっかり思ってるもんだから、イケてない間違いを犯しちゃうこともあったりしてね。
体調が悪くって何だか恐ろしい気持の時、夜が明ける時までって、すごく待ち遠しいのよね。
----------訳者の戯言---------
いり炭。熬炭(炒炭/いりすみ)ですが、「名おそろしきもの」の段で出てきています。いり炭というぐらいですから、火にあぶって湿気をとって、火つきをよくしてるようなんですが、それでも点きにくいんですね。
関係ないかもしれませんが、ガスコンロがなかなか点かない時はちょっとイラッとしますね。
和歌のやりとりがいかしてるかどうかは、当時のコミュニケーションにおいて重要な要素だったようです。今なら、LINEとかでもうまいこと返せなかったらちょっとハズイでしょ。あれですね。ちょっと違いますか。
まあ、和歌もです。っていうか、クォリティも大事ですが、スピード感も大事なんでしょう。女子同士で速さにばっかり気をとられてたら、ダメダメなミスをしたりね。素早く、しかも的確な対応こそがいかしてるんですね。まさにこれ、大阪の吉村知事です。
安倍首相はマスク配ってる場合ですか? 「うちで踊ろう」で犬と戯れ、お茶飲んでていいんですか? ってか、難しいことわかりませんけど、とにかくその辺のセンスは最悪なんですよね。
最後は、不安な夜、ですね。
一人暮らしとかで、病気の時はかなり不安になるもんです。実際、今、一人暮らしで熱が下がらないけど根拠が希薄でなかなかPCR検査もしてもらえない、という話を聞きました。仮に検査してもらえることになっても、公共交通機関を使えないので、高熱があるのに一人で自転車に乗って遠方まで行かないといけないって。まさに、夜になると不安な気持ちが募るでしょう。
課題山積ですが、終息に向けてできることは個人個人でもしていかないと、という感じですね。私もできることはやるように努めます。と、めずらしく殊勝な感じで、この段終了でございます。
【原文】
また、とみにていり炭おこすも、いと久し。人の歌の返しとくすべきを、え詠み得ぬほども心もとなし。懸想人などはさしも急ぐまじけれど、おのづからまたさるべきをりもあり。まして、女も、ただに言ひかはすことは、疾(と)きこそはと思ふほどに、あいなくひがごともあるぞかし。
心地のあしく、もののおそろしき折、夜のあくるほど、いと心もとなし。