枕草子を現代語訳したり考えたりしてみる

清少納言の枕草子を読んでいます。自分なりに現代語訳したり、解説したり、感想を書いています。専門家ではないので間違っていたらすみません。ご指摘・ご教授いただけると幸いです。私自身が読む、という前提ですので、初心者向けであって、何よりもわかりやすい、ということを意識しているのですがいかがでしょうか。最初から読みたい!という奇特な方は「(PC版)リンク」から移動してください。また、検索窓に各段の冒頭部分や文中のワードを入れて検索していただくと、任意の段をご覧いただけると思います(たぶん)。

暑げなるもの

 暑苦しげなもの。随身の長の狩衣。衲(のう)の袈裟。出居にいる近衛府の少将。ものすごく太ってて、髪の毛が多い人。六、七月の加持祈祷で、日中のお勤めをしてる阿闍梨あじゃり)。


----------訳者の戯言---------

随身(ずいじん)というのは、貴族の外出時に警護のために随従した近衛府の官人なんだそうです。今で言うところのSP。ケビン・コスナー的な人です。日本なら、岡田准一とも思えますが、「長」ですから、堤真一ですね。ドラマですけど。ご存じない方からすると何言ってるのかわかりませんね、すみません。

衲(のふ/のう)というのは衲衣(のうえ)のことだそうです。衲衣というのは、人が捨てた布を拾って、洗って縫い合わせた布で作った袈裟(けさ)のことだそうです。ま、そういうものですから、元々は質素なものの象徴でもあったのでしょう。つぎはぎのパッチワークですね。古代インドからこれが中国に来て華美になり、さらに日本では七条の袈裟とも言って、金襴や錦でできた仏事や法要の時に着る華麗な袈裟、という存在となりましたと。起源とは真逆です。
ま、私たちが着るカジュアルでも、パッチワークは意外と高いですよね。かえって手間がかかってるからでしょうか。COACHのパッチワークのデニムジャケットは9万円くらいでしたし、ユナイテッドアローズやシップスでもスカートが3万円くらいはしますものね。ラルフローレンのシャツで、7万円くらいのがあったのを見た記憶もあります。

出居(いでゐ/いでい)というのは、そもそもはシンプルに「外の方に出て座ること」や「寝殿の庇の内部にある応接用の部屋=客間」のことを指して言ったようです。そのほかにも、宮中行事の賭弓(のりゆみ)や仁王会(にんのうえ)、相撲(すまい)、弓場始の儀式などの時に庭上に作られた臨時の座のことも出居と言いました。また、この臨時の座席で定められた儀式次第を行う人のことも出居と言ったようです。
この段で書かれているのは、こうしたイベントの仮設コーナーの座席に座ってイベントの仕事に就いている近衛の少将が暑苦しそうに見えたということなのでしょう。
賭弓や弓場始は正月に、仁王会は毎年三月と七月(他に臨時もあり)、相撲は七月にあったそうですから、暑苦しいというからには、時期的には仁王会か相撲の時のことでしょうか。

原文にある「修法」というのは、密教で行われる加持祈祷のこと、だそうです。阿闍梨というのは、弟子の模範になるような位の高い僧侶のこととも言われていますが、今は真言宗の一般の僧侶が持つべき最低限の資格ともされているそうです。

暑苦しいっぽいものです。まあそうなのかなー、という感想です。感動が少なくてすみません。


【原文】

 暑げなるもの 随身の長の狩衣。衲(のふ)の袈裟。出居(いでゐ)の少将。いみじう肥えたる人の髪おほかる。六七月の修法の日中の時おこなふ阿闍梨

 

まんがで読む古典 1 枕草子 (ホーム社漫画文庫)

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