枕草子を現代語訳したり考えたりしてみる

清少納言の枕草子を読んでいます。自分なりに現代語訳したり、解説したり、感想を書いています。専門家ではないので間違っていたらすみません。ご指摘・ご教授いただけると幸いです。私自身が読む、という前提ですので、初心者向けであって、何よりもわかりやすい、ということを意識しているのですがいかがでしょうか。最初から読みたい!という奇特な方は「(PC版)リンク」から移動してください。また、検索窓に各段の冒頭部分や文中のワードを入れて検索していただくと、任意の段をご覧いただけると思います(たぶん)。

職の御曹司におはします頃、西の廂にて⑤ ~さて、師走の十余日のほどに~

 そして、十二月も十日余り過ぎたころ、雪がすごく降ったからって、女官なんかが、縁側にすごくたくさんの雪を集めて置いたのを「どうせだったら、庭にほんとの雪山を作らせましょう」って、侍を呼んで「(中宮さまからの)お達しですから」って言ったら、集まって作りはじめたの。主殿寮の官人で、お掃除に来ていた者たちもみんな寄ってきて、すごく高い雪山ができ上ったのね。中宮職の役人なんかも集まってきて、なんやかや言いながら面白がってるのよ。3、4人しかいなかった主殿寮のスタッフたちも20人ほどにまでなったんだから! 家に帰ってる侍も召集するために人を遣わすほどでね。「今日、この山を作るのに参加した人には3日の休暇を出しますよ。逆に来なかった人は3日分の休日返上ね」なんてお達しが出たもんだから、これを聞いて慌てて来た人もいたりして。でも家の遠い人には知らせられなかったけれど。

 作り終わったので、中宮職の役人を呼んで、下賜品として絹二巻セットを縁に投げ出したのを、一つずつ取って拝みながら腰に差して、みんな退出していったのね。袍(うへのきぬ=上着)なんかを着てた者は、狩衣に着替えたまんまで帰ってったわ。


----------訳者の戯言---------

「侍(さぶらひ)」というのは、そもそも有力貴族や諸大夫に仕える、通常は位階六位どまりの下級技能官人層を意味した言葉だそうです。
お察しの通りですが、「さぶらひ」、つまり元々は「侍ふ(さぶらふ)」という動詞から来ています。

まあ次第に、中でも武芸を仕事内容とする技能官人である「武士」を指すことが多くなったようですね。で、所謂「侍」=「サムライ」になっていきます。「ラストサムライ」のサムライ。トム・クルーズですね。いや、渡辺謙ですね。
で、現代、スポーツとかで言われるところの「サムライジャパン」とか「サムライブルー」とかにつながっていると。

前にも出てきたと思いますが、袍(うへのきぬ)は今でいう上着、スタイルはテーラードジャケットですね。狩衣はカジュアルスタイルです。

女法師やら、尼さんやらのお話かと思いきや、庭に雪山を作る話。で、その程度のことに参加したくらいで3日も有給休暇もらえるって! 逆に来なかった人は休みがなくなるって。なかなかのブラック組織です。中宮ほどの方が言ったら、なんでもあり的な。

ますます今後の展開がわからなくなってきましたが。⑥に続きます。


【原文】

 さて、師走の十余日のほどに雪いみじう降りたるを、女官どもなどして縁にいとおほく置くを、「同じくは、庭にまことの山を作らせ侍らむ」とて侍召して、「仰せごとにて」<と>いへば、集まりて作る。主殿寮の官人の御きよめに参りたるなどもみな寄りて、いと高う作りなす。宮司なども参り集まりて、言加へ興ず。三四人参りつる主殿寮の者ども二十人ばかりになりにけり。里なる侍召しに遣はしなどす。「今日この山作る人には日三日賜ぶべし。また、参らざらむ者は、また同じ数とどめむ」などいへば、聞きつけたるはまどひ参るもあり。里遠きはえ告げやらず。

 作りはてつれば、宮司召して衣二結ひ取らせて縁に投げ出だしたるを、一つ取りに取りて、拝みつつ、腰にさしてみなまかでぬ。袍など着たるは、さて狩衣にてぞある。

 

検:職の御曹司におはしますころ、西の廂にて 職の御曹司におはしますころ西の廂にて 職の御曹司におはします頃西の廂にて