職の御曹司におはします頃、西の廂にて④ ~その後、また、尼なる乞食~
その後、また尼さんスタイルの物乞いの、すごく品があってきれいな人が現れたから、呼び寄せてお話を聞いてたら、とっても恥ずかしそうにしたもんだから、かわいそうでね、例の衣を一着持たせたんだけど、伏し拝んだのはまあいいとして、泣いて喜んで帰っていくのを、ちょうど「常陸の介」が来てて見てたのよ。その後、長く姿が見えなかったんだけど、誰が彼女のことを思い出すかしら。思い出さないわよね。
----------訳者の戯言---------
かたゐ(=乞丐or乞児)というのは乞食のことだそうです。
というわけで、今度は別の物乞いの尼さんが登場。下品な「常陸の介」とは対照的に上品できれい、とのこと。
「常陸の介」ときたら、本段冒頭で派手に登場しておきながら、姿を現さなくなり、忘れられるという、まさかの展開。この先どうなる?
⑤に続きます。
【原文】
その後、また、尼なる乞食(かたゐ)のいとあてやかなる出で来たるを、また呼び出でてものなど問ふに、これはいとはづかしげに思ひてあはれなれば、例の衣一つたまはせたるを、ふし拝むはされどよし、さてうち泣きよろこびて往ぬるを、はやこの常陸の介は来あひて見てけり。その後久しう見えねど、誰かは思ひ出でむ。
検:職の御曹司におはしますころ、西の廂にて 職の御曹司におはしますころ西の廂にて 職の御曹司におはします頃西の廂にて