職の御曹司におはします頃、西の廂にて③ ~後、ならひたる~
その後、学習したのか、彼女、いつもわざわざ目につくように、うろうろするようになったの。で、まんまなんだけど、「常陸の介」ってニックネームをつけたのよ。服も白いのに替えてなくって、前とおんなじで汚れてたもんだから、あれはいったいどこにやったんだろ、とかって、ヤな感じはしてたのね。
右近(左近?)の内侍が参上してきた時、定子さまが「こうこうこういう者を、おしゃべりしたりなんかして親しくなって、ここのお抱えにしてるようなのね。上手いこと言って、いつも来てるのよ」って、小兵衛っていう女房にまねをさせて、お聞かせになったものだから、「その人、何とかしてお見せいただきたいですわ。こちらのお馴染みさんみたいだから、絶対横取りしたりはしませんから」なんて言って、笑うの。
----------訳者の戯言---------
「右近(左近?)の内侍」というのは、一条天皇に仕えてる女房の一人だそうです。
かの女法師、どうやら多少の嫌悪感は持たれつつも、定子サロンの専属となった模様。何だか面白げなので、右近(左近?)の内侍も興味津々です。
④に続きます。
【原文】
後、ならひたる<にや>あらむ、常に見えしらがひあり<く>[て]。やがて常陸の介とつけたり。衣も白めず、同じすすけにてあれば、いづち遣りてけむなどにくむ。
<右>[左]近の内侍(ないし)の参りたるに、「かかるものをなむ語らひつけておきためる。すかして、常に来ること」とて、ありしやうなど、小兵衛といふ人にまねばせて聞かせさせ給へば、「かれいかで見侍らむ。必ず見せさせ給へ。御得意ななり。さらによも語らひとらじ」など笑ふ。
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