枕草子を現代語訳したり考えたりしてみる

清少納言の枕草子を読んでいます。自分なりに現代語訳したり、解説したり、感想を書いています。専門家ではないので間違っていたらすみません。ご指摘・ご教授いただけると幸いです。私自身が読む、という前提ですので、初心者向けであって、何よりもわかりやすい、ということを意識しているのですがいかがでしょうか。最初から読みたい!という奇特な方は「(PC版)リンク」から移動してください。また、検索窓に各段の冒頭部分や文中のワードを入れて検索していただくと、任意の段をご覧いただけると思います(たぶん)。

頭の中将の、すずろなるそら言を聞きて② ~長押の下に~

 女房たちはみんな長押の下で、灯を近くに取り寄せて、「扁つき」の遊びをしているのよ。「まあ、うれしい。早くおいでなさい」なんて、私を見つけて言うんだけど、私はガッカリな気分になって、何で参上しちゃったんだろうって思ったの。炭櫃(火鉢)のそばに座ってたら、そこにまたまたたくさんの人が来てね、おしゃべりしてたら、「『誰それ』(あたし?)が参上してます?」って、とっても明るくきわだった声で言うのよ。「おかしいわね。いつの間に(私がここにいるのがわかったのかな)? 何か用事でもあるのかしらね?」って、使いの者に訊ねさせたら、(使いの)主殿司だったのよ。「ただ私のほうで、人づてじゃなく申し上げたいことがあって」って言うもんだから、出てったら、「これは頭中将殿からさし上げられたものです。ご返事を早くお願いします」って言うのよね。

 すごく嫌っていらっしゃるのに、どんな手紙なのよって思ったんだけど、「今すぐに急いで見るほどのものでもないから、お帰りください。用件はわかりましたので」って、懐にしまって。それでもやっぱり、女房たちのおしゃべりを聞いてたら、すぐに引き返して来て、「『だったら、さっきの手紙を返してもらって来て』とおっしゃってるんですよ。なので、早く、早くお返事を!」って言うのが、どうも怪しくって。伊勢の物語みたいじゃんって思って、見たら、青い薄手の紙に、すごくキレイに書いていらっしゃるのよ。でも、ドキドキするようなものではなかったわ。


----------訳者の戯言---------

「扁をつく」というのは「扁つき」といって文字の扁(へん)に旁(つくり)を付ける遊びなのだそうです。が、実は正確なことはわかってないらしいです。

「主殿司」は宮中の雑務担当職員でしたね。

「伊勢の物語」の部分は「魚の物語」「いをの物語」「かいをの物語」などの説があるようです。

まだまだこの段、先が長そうです。③に続きます。


【原文】

 長押の下に火近く取り寄せて、<さしつどひて>扁をぞつく。「あな、うれし。とくおはせよ」など見つけていへど、すさまじき心地して、何しにのぼりつらむとおぼゆ。炭櫃<の>もとにゐたれば、そこにまたあまたゐて、物などいふに、「なにがし候ふ」といと花やかにいふ。「あやし。いつの間に、何事のあるぞ」と問はすれば、主殿司なりけり。「ただここもとに、人づてならで申すべきことなむ」といへば、さし出でていふに、「これ、頭の殿の奉らせ給ふ。御返事とく」といふ。

 いみじくにくみ給ふに、いかなる文ならむと思へど、「ただ今急ぎ見るべきにもあらねば、往ね。今きこえむ」とて、懐に引き入れて、なほなほ人の物いふ聞きなどするに、すなはち帰り来て、「『さらば、そのありつる御文をたまはりて来』となむ仰せらるる。とくとく」といふが、<あやしう、>い<せ>[を]の物語なりやとて見れば、青き薄様にいと清げに書き給へり。心ときめきしつるさまにもあらざりけり。


検:頭の中将のすずろなるそら言を聞きて

 

マンガでさきどり枕草子 (教科書にでてくる古典)

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