枕草子を現代語訳したり考えたりしてみる

清少納言の枕草子を読んでいます。自分なりに現代語訳したり、解説したり、感想を書いています。専門家ではないので間違っていたらすみません。ご指摘・ご教授いただけると幸いです。私自身が読む、という前提ですので、初心者向けであって、何よりもわかりやすい、ということを意識しているのですがいかがでしょうか。最初から読みたい!という奇特な方は「(PC版)リンク」から移動してください。また、検索窓に各段の冒頭部分や文中のワードを入れて検索していただくと、任意の段をご覧いただけると思います(たぶん)。

短くてありぬべきもの

 短くっていいもの。急ぎのモノを縫う糸。身分の低い女の髪。人の娘の声。灯台


----------訳者の戯言---------

短くてもいいもの。短いからこそいいもの?という段です。

身分の低い女性というのは、下仕えしてる者とか農作業をしてるような者だから、公家、貴族の女性のような長い髪はいりませんわよ、作業のじゃまになるでしょ?って感じですね。清少納言は普通に、当たり前にそう思ってるようです。
平安時代の女性は髪が長いのが美人の条件、という風にいろいろなところで書かれています。ただ、それは公家社会に限られてるわけで、下々の者がたとえどんなにキュートな、新垣結衣みたいな顔でも髪が短いからNGなんですね。それもどうかと思いますが。身分が低いんだから、短くていいじゃん、ブスでいいじゃん、っていう清少納言。あなたのほうが心がよっぽど醜いと思います。

人の娘。ですが、わざわざ「人の娘」と言うぐらいですから、まだ結婚していない女性、若い女の子のことなんでしょう。清少納言が言うからには貴族の「お嬢様」でしょうね。
「声」が短い方がいいわって言うわけです。

しかし声が「長い、短い」というのはどういうことなのでしょうか。
「あたし~エルメスう~~だあい好きなんですう~」みたいなのが長い感じでしょうか。違うでしょうね。それキャバクラのお姉さんですよ。
声が伸びる、つまりロングトーンということなら、ホイットニー・ヒューストンとかの感じですか。レディー・ガガとか意外かもしれないけど声伸びてるし、アデルとかも。日本だとMISIA? 吉田美和とかですか? 天童よしみ? それともちょっと違いますね。

むしろ「短い」としたのは、言葉数が少ないとか、話が短いということだと思われます。おしゃべりのし過ぎはよくありませんよ、お嬢様。という感じではないかと思いますがいかがでしょうか。

灯台というのは、今で言うとスタンドライトですね。燭台と言った方がわかりやすいかもしれません。ペンダントライトやシーリングライト、ましてやシャンデリアなど無いですから、灯台の高さの高低、つまり長短があって、それでいろいろな照らし方をしたのでしょう。灯台下暗しと言われるように、長いものは広く遠くまで照らしますが、近くはそう明るくない。逆に、低い(短い)灯台はスタンドライトのようなもので手元が明るいので、清少納言はそっちのほうがよかったのでしょう。


短しというのは空間的に短い、あるいは低いということらしいです。ちなみに「高し」の対は「短し」であって、「低し」という語は中古にはなかったようですね。また時間的に短い=早い、速い、ということも「短し」になります。
「短くてありぬべきもの」を、またもや、まぜこぜに出してくるの、たいして面白くないし、私は好きではないんですが、我慢するしか仕方ないんでしょうか。


【原文】

 短くてありぬべきもの とみのもの縫ふ糸。下衆女の髪。人のむすめの声。灯台

 

枕草子

枕草子

  • 作者:清少 納言
  • 発売日: 2018/05/16
  • メディア: Audible版
 

 

おほきにてよきもの

 大きいのがいいもの。家。餌袋。法師。くだもの。牛。松の木。硯の墨。
 男子の目の細いのは女性っぽいわ。とはいっても、鋺(かなまり)みたいなのも恐ろしいわね。火桶。ほおずき。山吹の花。桜の花びら。


----------訳者の戯言---------

家ですか、やはり。そりゃ100㎡超の家に住みたいですよー。え? 小っちゃすぎっすか? すみませんね、この程度で。清少納言のは貴族ですから、豪邸なんでしょうね。ナントカ殿とかいう。結婚式場かよ。

「餌袋」というのは菓子(果物)や乾飯(ほしいい)などを入れて運ぶ袋のことだそうです。平たく言うと弁当袋ですね。意外と食いしん坊ですか? 

法師。お坊さんはデカいほうがいいのでしょうか。清少納言的にはそうだったのでしょう。好みの問題だと思いますが。

菓子というのは、主に果物、木の実とかのことです。チョコとかポテチとかシュークリームとか、今みたいなお菓子はあまりなかった時代ですね。通常の食事以外の食べ物は菓子と言ったようです。

鋺(かなまり)というのは、金属製の椀のことだそうです。大きくて真ん丸でデカい、という感じでしょうか。

酸漿(ぬかづき/ぬかずき/ほほづき/ほおづき/ほおずき)というのは、あの「ほおずき」です。鬼灯とも書きますね。「鬼灯」の字を当てるのは、盆に先祖が帰ってくるとき目印となる提灯の代わりとして飾られたことに由来して、だそうです。ガクに身が包まれていて、その様子が提灯のようだから、でしょう。あの赤いのがデカいのがいいっていうことでしょうか? そういえば「鬼灯の冷徹」というアニメがありました。関係ないですが。


この段は大きいのがいい!っていう話です。まあ、そりゃそうなんでしょうけど。それ、何かおもしろい?ってことですよ。ふーん、あっそ、って思うだけなんですが…。この人、〇〇なものってよく列挙するんですけど、カテゴリーとか視点を変えてておもしろいでしょ?すごいでしょ?って押してくるのが、どうもね。実はこのパターン、全然おもしろくないんですよね、本人気がついてないみたいなんですけどね。


【原文】

 大きにてよきもの 家。餌袋(ゑぶくろ)。法師。菓子(くだもの)。牛。松の木。硯の墨。

 男(をのこ)の目の細きは、女びたり。また、鋺(かなまり)のやうならむもおそろし。火桶。酸漿(ほほづき)。山吹の花。桜の花びら。

 

 

月のいと明かきに

 月がすごく明るい夜、川を渡ったら、牛が歩くのにつれて、水晶なんかが割れたみたいに水が散っていくのはおもしろいわね。


----------訳者の戯言---------

月の明るい夜、牛車で浅い川を渡っているのでしょうか。
そういえば「月の輝く夜に」って映画ありましたね。冒頭の部分見て思い出しましたよ。なんか昔の名作っていう感じですけど、観たら意外と良かったですね。全然関係ないですが。


水晶というのは、二酸化珪素(SiO2)が結晶してできた鉱物です。一般にはSiO2の結晶した鉱物は石英と言われており、その中でも無色透明で六角の柱状のきれいな結晶形態をしたものを水晶と呼んでいます。石英を英語などではクオーツと言いますが、水晶のことをクオーツと言うことも多いですね。クリスタルというのも水晶です。呼び方が多くてややっこしいこと極まりない。

よく西洋の占い師などが水晶の玉を持っていますが、あれですね。当然、人工的なガラスができるまではあんな透明の物体など他にないですから、価値も高かったでしょうし、不思議な力があるなどとされていてもおかしくはないでしょう。
余談ですが、不純物が入って色が付いたものが、シトリンとかアメシスト紫水晶)、ローズクオーツ、スモーキークオーツとかです。他にも石英系の半貴石はたくさんあります。

クオーツといえば、機械式時計に対して、水晶式時計のことも一般にクオーツ時計と言います。
水晶(石英)というのは一定の周波数の電気信号を発振するらしいんですが、この水晶振動子がつくり得る時間精度は、機械式時計に比べ飛躍的に高いのですね。それを利用したのがクオーツ時計です。現在の電池式の時計はほとんどクオーツなんですね。ただ、私は個人的に機械式時計が好きで、持っている腕時計は全部機械式なんですが。

また逸れました。鉱物の結晶形態というのは鉱物の原子配列が外形に表れているものではありますが、違う結晶形態をなすことも多くあるそうです。したがって結晶形態だけでは鉱物の種類はわかりません。また、結晶形態が明瞭な結晶は自形といい、やや明瞭な結晶を半自形、結晶形態が全く見られない単なる塊のような結晶を他形というそうです。
SiO2=石英の場合は、一般にここで言う「自形」で無色透明なものを水晶と呼んでいます。

ただ、ここでややっこしいのは、日本語においては、昔は石英の塊(ほとんどの石英)を水晶、今水晶と呼ばれているものを石英と呼んでいたという説が強いらしいんです。全く逆転していたと。ということは、清少納言が言う水晶は今の塊状の石英である可能性が高いです。
無色透明に輝いてるというよりも、月のように白くて、しかもランダムにキラキラしている感じでしょうか。石英の塊にはそんなイメージがあります。それが割れたみたいに、水が散ったと。もちろん彼女がどのようなものを見て、どう感じたかはわかりませんが。


月がすごく明るい夜、だそうですが、実は明日10月29日は旧暦九月の十三日にあたります。先月の十五夜中秋の名月でしたが、今回のは晩秋(季秋)の名月ということになりますね。別名「栗名月」とか「豆名月」とも言われます。おおよそ十五夜は満月で、中国からやってきたイベントに違いないのですが、十三夜「栗名月」は日本でできたオリジナルらしいです。栗、豆など収穫したものを供えることもしたらしいですから、収穫の感謝を込めて観たのでしょうか。しかも、「未満」の月というところが日本っぽいですね。もう少しで満月、という奥ゆかしい感じが好まれたのでしょうか。空気が冷たく澄んで、高度も冬高くなりすぎる前ですから、きれいに見やすくもなってきます。

現代の私たちの生活に目を向けると、ハロウィンで盛り上がる時季ですね。ハロウィンもその年に穫れたかぼちゃ等を使って収穫を祝うものだったようですが、先にも書いたとおり、この栗名月も収穫の感謝祭的な意味があるようです。仮装してみんなで盛り上がるハロウィンに対して、静かに月を眺めるというイベント。文化の違いが感じられておもしろいですね。


【原文】

 月のいと明かきに、川を渡れば、牛の歩むままに、水晶(すゐさう)などの割れたるやうに、水の散りたるこそをかしけれ。

 

 

よくたきしめたる薫物の

 よく焚きしめた薫物(たきもの)が、昨日か、一昨日なのか今日なのかなんて忘れちゃったけど、取り上げたら、煙の香が残ってるのは、たった今焚きしめた香りよりすばらしいわ。


----------訳者の戯言---------

薫物というのは、種々の香を調合して作った練香。または、その香を焚くこと、焚きしめたものを言います。

前段に続いて「香り」のことを書いてるんですね。ご存じのとおり、香(こう)を焚くというのは、日本におけるアロマ文化の一つです。海外には無いのか、詳しい方に聞いてみたら、ネイティブアメリカンが、浄化のためにセージを焚くということをしているようですね。調べてみたところ「スマッジング」というものらしいです。
アロマキャンドルもまた加熱して香りを出すという点では共通しています。こちらはヨーロッパ、どうも起源は中世あたりのようで、蠟に香油を加えたものだということです。ただ、焚くというイメージはないですね。


所謂日本の「お香」の香料には白檀、伽羅(きゃら)、沈香(じんこう)などの天然の香木や、麝香(じゃこう)、竜涎(りゅうぜん)といった動物性のものがあり、これらを練り合わせて好みの香を作る合わせ香というものも行われたりするそうです。つまり、ブレンディングですね。

麝香というのは、ムスクと言われているそうです。たしかにムスクは聞いたことがあります。麝香(じゃこう)も、ジャコウ鹿とか、ジャコウ猫とか、聞いたことあるワードですよね。香料としては、ジャコウジカ(麝香鹿)の雄のフェロモンの元、分泌物、それを乾燥させたものなのだそうです。ジャコウジカは日本にはいませんから、輸入品だったのでしょう。南アジアに生息する鹿なので、中国経由で入ってきていたのでしょうね。今はもちろんワシントン条約で取引が禁止されてますから、売られているムスクを謳った商品は合成だそうです。天然のものは全然違うすばらしい香りらしいですから、やはり密猟が多いらしいんですね。複雑な気分がします。そこまでしてムスクの匂い、欲しいんですかね。

竜涎(りゅうぜん)香というのは、マッコウクジラの腸内に発生する結石だそうです。アンバーグリスとも言うそうですね。アンバーというのは琥珀のこと。元々は灰色の琥珀という意味だそうです。日本には室町時代あたりに入って来たのでは?と言われてますから、残念ながら平安時代にはまだ無かったと思われます。
竜涎香は水に浮くらしいですから、天然のものは海岸に漂着したものなのだそうですが、商業捕鯨が行われていた頃は、そちらからの供給もあったらしいですね。ですから、今はやはりめったに手に入らないレアアイテムのようです。

実は京都の老舗のお香屋さんには、古くからの香木や香料の備蓄が何百年分もあるんだそうですね。天然の麝香や竜涎香も持っているらしいです。
そこを世界中のアロマだとかコスメだとかパヒュームのハイブランドの会社の人たちが訪れるんだそうです。そう聞くと、日本のお香文化の副産物ですが、大したものだと思います。


少し逸れますが、日本にはポプリのようなものもあったんですね。
これまでにも何回か出てきましたが、「薬玉(くすだま)」がそれです。五月五日(端午の節句)に邪気をはらうために、御帳の柱やカーテンにかけた玉だそうです。先にも出てきた麝香(じゃこう)などの香料を錦の袋に入れて、菖蒲とか蓬なんかで飾って、五色の糸を垂らしたらしいですね。これを飾ったと。

この薬玉(くすだま)っていうのは、延命長寿、無病息災の願いを込めたものではあるんですが、実際にはアロマ効果を狙ったのでしょう。いい気分になる。アロマの心理的効果、つまりリラックス効果、抗不安効果というものがあるとしたんでしょうね。


さて、日本のアロマ。香を焚くという文化は、おそらくは仏教などと同様、中国から入ってきたのでしょう。それが貴族によって独自の文化となり、部屋や衣服への「移香」を楽しんだと。
清少納言は2、3日前の移香の残り香のほうが、今日焚いたばかりの香よりもいいと言うんですね。ダイレクトに来るよりも、微妙にほのかに香るのがいいということでしょうか。レノアですか。アロマリッチ? それともフレアフレグランスですか。ご結婚おめでとうございます。

ま、たしかにキツい香水の匂いなど、エレベーターで辟易することはありますね。
それにしても。
3年ぶりにLINE送って来る女、どーよって話ですよ。どう考えてもおかしいでしょ。しかもノコノコ会いに行く男。ダッサ。いくらなんでもダサ過ぎる。しかも香水のブランド名覚えてる男。きしょいっす。覚えててもいいけど連呼すな。借金のおねだりか、健康食品買ってくれ、ぐらいしかないでしょ、疑えよ。そうでなくても身勝手極まりないB型的女。
というわけで、あの歌がなんでそんなにいいのかわからない私です。


【原文】

 よくたきしめたる薫物の、昨日、一昨日、今日などは忘れたるに、引き上げたるに、煙の残りたるは、ただ今の香よりもめでたし。

 

枕草子 (岩波文庫)

枕草子 (岩波文庫)

  • 作者:清少納言
  • 発売日: 1962/10/16
  • メディア: 文庫
 

 

五月の菖蒲の

 五月の節句の菖蒲が、秋冬が過ぎるまで残ってるの、すごく白くなって枯れて変になっちゃってるんだけど、引き折って取り上げたら、あの時の香りが残ってて漂うの。すごくいい感じなのよね。


----------訳者の戯言---------

かかふは、「抱かふ」と書き、抱きかかえる、召しかかえる、さらに→課せられたものとして保持する、つまり、現代で言うところの、仕事を抱える、悩みを抱える、等々の「抱える」のニュアンスもあるようですね。
ですが、ここで出てきた「かかへたる」はまた少し違う意味合いのようですね。「香りが漂う」という訳になります。「香かふ」の説もあるそうですから、そっちかもしれません。

また出てきました、菖蒲。ややっこしいやつです。
基本、菖蒲(しょうぶ)です。アヤメではありません。ただ、時々アヤメの場合があります。どないやねん。

菖蒲の芳香には、「テルペン」という分類に属する香り成分が多く含まれており、そのほか、アザロン、オイゲノールといった香りの成分が含まれているそうです。これらの成分は、血行促進や疲労回復にも効果があるそうです。入浴剤みたいなものですね。で、この菖蒲の根茎を乾燥させたものが「菖蒲根」という生薬となります。香りの強いものが良いとされていて、漢方では健胃や鎮痛などに効果がある…ということが言われてるらしいです。ほんまか?

とはいえ、菖蒲湯というものがあるのですから、入浴剤として使われるのは確かです。
そもそも「端午の節句」などというものも、古代中国で「厄祓い」のために始まった風習らしいですから、この菖蒲湯もそんな感じのものだったのだと思っていいでしょう。いい匂いするし~今年もやっか、ということで毎年やり続けて数千年ということですね。
実際、調べると、楽天Yahoo!ショッピングでも売られています「乾燥菖蒲」。が、Amazonでは販売なし。たしかにAmazonっぽくねー。

ただ、今はバスクリンもありますし、バブもあります。クレイとかアユラみたいなハイソでおしゃれなブランドものもあるから、今さら菖蒲湯ってのもね。そりゃ、オーガニックかもしれませんけど。オーガニックコスメのブランドも山ほどありますからね、今は。

というわけで、入浴剤というか芳香剤というか。アロマテラピーも、普通に天然の植物成分のアロマオイル(=エッセンシャルオイル)でやるわけですから、そうそう違うものではりません。と思って調べてみると、菖蒲由来の「カラムス」という精油エッセンシャルオイル)もあるらしいことがわかりました。アロマディフューザーとかに入れたりするといかしてますわね。

というわけで、なんかオシャレっぽい感じにまとめました私。清少納言もほんとはこんな風にまとめたかったでしょうね。どーだ。


【原文】

 五月の菖蒲の、秋冬過ぐるまであるが、いみじう白(しら)み枯れてあやしきを、引き折りあげたるに、その折の香の残りてかかへたる、いみじうをかし。

 

まんがで読む 枕草子 (学研まんが日本の古典)

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  • 発売日: 2015/03/17
  • メディア: 単行本
 

 

清水などに参りて

 清水寺なんかにお参りして、坂の下のほうから上っていくあたりで、柴を焚く香りが、すごくしみじみとしてて、それがいい感じなの。


----------訳者の戯言---------

坂もと。今は京都市中京区に坂本町がありますが、どうやら違うようで。坂本町は現在の京都御所の南あたりです。清水寺とは全然違う場所ですね。
「もと(本)」は下、元という意味合いかと思います。

道すがら、柴を焚いてたんでしょうね。焚火か民家の炊事でしょう。
今みたいにビニール袋やプラスチックとかは燃やさないですから、よほど変なものを燃やさなければ、香りは悪くないと思います。ま、平安時代ですから、ダイオキシンがどーのという議論はされません。ダイオキシンの発生や毒性についてはいろいろと科学的に議論されていますし、ほんとうに危険なのか、環境に対してどうなのかという詳細は省きますが、いずれにしても石油化学物質を燃やすと強い臭いがしますから、柴であれば安心で、風情も感じられたのでしょう。

さて、ここ4段くらい読んでると、賀茂神社広隆寺長谷寺清水寺、と、寺社に詣でている時のことだとわかります。しかも、季節や情景を盛り込んでいるんですね。これ、つまり、レジャースポットに出かけたときのインスタやツイートのアップに近いもの。ま、リアルタイムではなく、後年書かれたものでしょうけどね。
画像(情景描写)をアップして一言、みたいな感じがウケると思ったんでしょう、清少納言的には。ただ、本人はインフルエンサーのつもりかもしれませんが、それほど大したことは書いていません。今ならフォロワー2ケタレベルかと思います。


【原文】

 清水などに参りて、坂もとのぼるほどに、柴たく香のいみじうあはれなるこそをかしけれ。

 

枕草子 いとめでたし!

枕草子 いとめでたし!

 

 

九月二十日あまりのほど

 9月20日過ぎの頃、初瀬(の長谷寺)にお参りをして、とても小さな家に泊まったんだけど、すごく疲れてたから、ただただ眠り込んじゃってたの。
 夜が更けて、月明かりが窓から漏れてたから、人がみんなが横になってるんだけど、衣の上に白く映ったりなんかしたのが、すごくしみじみと感じられてね。そんな時に、人は歌を詠むんでしょうね!


----------訳者の戯言---------

初瀬(はせ/はつせ)は地名です。今の奈良県桜井市です。長谷寺(はせでら)があります。

旧暦9月20日頃は、今の暦で行くと10~11月くらいです。月は更待月(ふけまちづき)。夜半~夜更けの月で、一眠りしてから見かける月とされています。
多くの場合、仲秋、つまり陰暦八月二十日の月のことを指すらしいですが、一般には二十日月=更待月だそうです。

夜更けに窓から差し込む二十日月の月明かりの風情♪ という段です。清少納言が直接月を見ているわけではありませんが。
とりたてて、コレ!というポイントはありません。割とつまらないです。


【原文】

 九月二十日あまりのほど、初瀬に詣でて、いとはかなき家に泊まりたりしに、いと苦しくて、ただ寝に寝入りぬ。

 夜ふけて、月の窓より洩りたりしに、人の臥したりしどもが衣の上に白うて映りなどしたりしこそ、いみじうあはれとおぼえしか。さやうなるをりぞ、人歌よむかし。

 

#枕草子 #現代語訳

 

学びを深めるヒントシリーズ 枕草子

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新潮日本古典集成〈新装版〉 枕草子 上

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