枕草子を現代語訳したり考えたりしてみる

清少納言の枕草子を読んでいます。自分なりに現代語訳したり、解説したり、感想を書いています。専門家ではないので間違っていたらすみません。ご指摘・ご教授いただけると幸いです。私自身が読む、という前提ですので、初心者向けであって、何よりもわかりやすい、ということを意識しているのですがいかがでしょうか。最初から読みたい!という奇特な方は「(PC版)リンク」から移動してください。また、検索窓に各段の冒頭部分や文中のワードを入れて検索していただくと、任意の段をご覧いただけると思います(たぶん)。

月のいと明かきに

 月がすごく明るい夜、川を渡ったら、牛が歩くのにつれて、水晶なんかが割れたみたいに水が散っていくのはおもしろいわね。


----------訳者の戯言---------

月の明るい夜、牛車で浅い川を渡っているのでしょうか。
そういえば「月の輝く夜に」って映画ありましたね。冒頭の部分見て思い出しましたよ。なんか昔の名作っていう感じですけど、観たら意外と良かったですね。全然関係ないですが。


水晶というのは、二酸化珪素(SiO2)が結晶してできた鉱物です。一般にはSiO2の結晶した鉱物は石英と言われており、その中でも無色透明で六角の柱状のきれいな結晶形態をしたものを水晶と呼んでいます。石英を英語などではクオーツと言いますが、水晶のことをクオーツと言うことも多いですね。クリスタルというのも水晶です。呼び方が多くてややっこしいこと極まりない。

よく西洋の占い師などが水晶の玉を持っていますが、あれですね。当然、人工的なガラスができるまではあんな透明の物体など他にないですから、価値も高かったでしょうし、不思議な力があるなどとされていてもおかしくはないでしょう。
余談ですが、不純物が入って色が付いたものが、シトリンとかアメシスト紫水晶)、ローズクオーツ、スモーキークオーツとかです。他にも石英系の半貴石はたくさんあります。

クオーツといえば、機械式時計に対して、水晶式時計のことも一般にクオーツ時計と言います。
水晶(石英)というのは一定の周波数の電気信号を発振するらしいんですが、この水晶振動子がつくり得る時間精度は、機械式時計に比べ飛躍的に高いのですね。それを利用したのがクオーツ時計です。現在の電池式の時計はほとんどクオーツなんですね。ただ、私は個人的に機械式時計が好きで、持っている腕時計は全部機械式なんですが。

また逸れました。鉱物の結晶形態というのは鉱物の原子配列が外形に表れているものではありますが、違う結晶形態をなすことも多くあるそうです。したがって結晶形態だけでは鉱物の種類はわかりません。また、結晶形態が明瞭な結晶は自形といい、やや明瞭な結晶を半自形、結晶形態が全く見られない単なる塊のような結晶を他形というそうです。
SiO2=石英の場合は、一般にここで言う「自形」で無色透明なものを水晶と呼んでいます。

ただ、ここでややっこしいのは、日本語においては、昔は石英の塊(ほとんどの石英)を水晶、今水晶と呼ばれているものを石英と呼んでいたという説が強いらしいんです。全く逆転していたと。ということは、清少納言が言う水晶は今の塊状の石英である可能性が高いです。
無色透明に輝いてるというよりも、月のように白くて、しかもランダムにキラキラしている感じでしょうか。石英の塊にはそんなイメージがあります。それが割れたみたいに、水が散ったと。もちろん彼女がどのようなものを見て、どう感じたかはわかりませんが。


月がすごく明るい夜、だそうですが、実は明日10月29日は旧暦九月の十三日にあたります。先月の十五夜は仲秋の名月でしたが、今回のは晩秋の名月ということになりますね。別名「栗名月」とか「豆名月」とも言われます。十五夜は満月で、中国からやってきたイベントに違いないのですが、十三夜「栗名月」は日本でできたオリジナルらしいです。栗、豆など収穫したものを供えることもしたらしいですから、収穫の感謝を込めて観たのでしょうか。しかも、「未満」の月というところが日本っぽいですね。もう少しで満月、という奥ゆかしい感じが好まれたのでしょうか。空気が冷たく澄んで、高度も冬高くなりすぎる前ですから、きれいに見やすくもなってきます。

現代の私たちの生活に目を向けると、ハロウィンで盛り上がる時季ですね。ハロウィンもその年に穫れたかぼちゃ等を使って収穫を祝うものだったようですが、先にも書いたとおり、この栗名月も収穫の感謝祭的な意味があるようです。仮装してみんなで盛り上がるハロウィンに対して、静かに月を眺めるというイベント。文化の違いが感じられておもしろいですね。


【原文】

 月のいと明かきに、川を渡れば、牛の歩むままに、水晶(すゐさう)などの割れたるやうに、水の散りたるこそをかしけれ。