枕草子を現代語訳したり考えたりしてみる

清少納言の枕草子を読んでいます。自分なりに現代語訳したり、解説したり、感想を書いています。専門家ではないので間違っていたらすみません。ご指摘・ご教授いただけると幸いです。私自身が読む、という前提ですので、初心者向けであって、何よりもわかりやすい、ということを意識しているのですがいかがでしょうか。最初から読みたい!という奇特な方は「(PC版)リンク」から移動してください。また、検索窓に各段の冒頭部分や文中のワードを入れて検索していただくと、任意の段をご覧いただけると思います(たぶん)。

うれしきもの④ ~ものの折に衣打たせにやりて~

 何かの折に着物を打たせにやって、どうだろうかな??と思ってたら、きれいになってきたの。挿櫛(さしぐし)を磨かせたら美しくなったのも、またうれしいわ。他にもうれしいことはいっぱいあるでしょ!?

 何日も何か月も病気がひどくて苦しんでたのが治ったのもうれしいわね。それが愛する人の場合なら、自分のことにもましてうれしいの。

 中宮さまの御前に女房たちみんながぎっしり座ってたから、後から参上した私は少し遠い柱のところなんかに座ってたんだけど、すぐにお見つけくださって「こちらへ」っておっしゃるものだから、みんなが道をあけて、すごく近くにお呼び入れくださったのはうれしいことだったわ。


----------訳者の戯言---------

挿櫛(さしぐし)というのは、髪を結ってから、髪の乱れを整えたり、髪に挿して飾りに用いる櫛です。「解き櫛」「梳き櫛」に対し「飾り櫛」とも言うそうですね。比較的目が細かく、アクセサリー的な要素が強いもので、櫛かんざし、櫛型かんざしなどと呼ばれます。今も日本髪に使われるアイテムのようですね。

病気が治ったら、うれしいです。たしかに。久々に共感しましたよ、清少納言。けど、病気が治る件については先にも書いてたような…。やはり彼氏の病気が治るのはよほどうれしいんですね。繰り返し書いてます。先進医療が無かった時代ですから、病気が治るというのは大きなよろこびのあるできごとだったのでしょう。

しかしやっぱりシメは、定子さまに気に入られてる私!という小自慢がついつい出ます。
思いのまま、素直に、無邪気に書いてるという好意的な解釈をする人もいるようですが、これだけたくさんの本を読んで豊富な知識を持ってる30歳もとっくに過ぎた大人ですからね、もう少しおひかえ気味でもいいようなものですけどね。
ま、うれしかったんでしょうね。

というわけで、「うれしいもの」をかなりランダムに書き連ねた段。ここまででございます。


【原文】

 ものの折に衣打たせにやりて、いかならむと思ふに、きよらにて得たる。刺櫛(さしぐし)磨(す)らせたるに、をかしげなるもまたうれし。「また」もおほかるものを。

 日頃、月頃しるきことありて、悩みわたるが、おこたりぬるもうれし。思ふ人の上は、わが身よりもまさりてうれし。

 御前に人々所もなくゐたるに、今のぼりたるは、少し遠き柱もとなどにゐたるを、とく御覧じつけて、「こち」と仰せらるれば、道あけて、いと近う召し入れられたるこそうれしけれ。