枕草子を現代語訳したり考えたりしてみる

清少納言の枕草子を読んでいます。自分なりに現代語訳したり、解説したり、感想を書いています。専門家ではないので間違っていたらすみません。ご指摘・ご教授いただけると幸いです。私自身が読む、という前提ですので、初心者向けであって、何よりもわかりやすい、ということを意識しているのですがいかがでしょうか。最初から読みたい!という奇特な方は「(PC版)リンク」から移動してください。また、検索窓に各段の冒頭部分や文中のワードを入れて検索していただくと、任意の段をご覧いただけると思います(たぶん)。

物のあはれ知らせ顔なるもの

 情けない気持ちが伝わってくる顔っていうと…。鼻水を垂らし、ひっきりなしに鼻をかみながら話してる声。眉を抜いてる顔。


----------訳者の戯言---------

「物のあはれ」と言えば「源氏物語」というのが定番で、「あはれ」といえば概ね、悲しみやしみじみした情感を指すと言われています。
源氏物語」は「あはれ」の文学だと。そうですか。まあ、偉い学者の方々がそうおっしゃっているのですから、そういう側面はあるのでしょう。

しかし、ここで出てきた「枕草子」の「あはれ」はなんか違う気もします。「源氏物語」のような高尚なストーリー性もキャラクター描写もないですしね。そんな大そうな「悲哀」でもなさそうです。

だいたい、鼻を垂らす、って。
間断なく鼻をかむって。
で、眉毛を抜いてる顔って。これ、「あはれ」ですか? えーたぶん、それもまた真なりということですね。

即ち「しみじみ悲しい」というよりも、ここでは「みじめな、情けない」あたりのニュアンスの心情だと思います。「もののあはれ」って実はもっと広範で、もっと複雑なものなのだということなのでしょう。

この時代、成人女子は眉毛を抜いて眉墨を引いてたようですが、やっぱその時の顔って情けねーって感じでしょうし(今もそうかも)、鼻水垂らしてたり、鼻かんでたりするのもね、「ダッセー顔」ってことなのでしょう。
もののあはれ」と言っても、必ずしもあの「源氏物語」の「あはれ」的なものばかりではないのだと、それがわかったのはよかったですね。


【原文】

 物のあはれ知らせ顔なるもの はな垂り、間(ま)もなうかみつつ物いふ声。眉抜く。

 

検:もののあはれ知らせ顔なるもの

 

NHK「100分de名著」ブックス 清少納言 枕草子

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