枕草子を現代語訳したり考えたりしてみる

清少納言の枕草子を読んでいます。自分なりに現代語訳したり、解説したり、感想を書いています。専門家ではないので間違っていたらすみません。ご指摘・ご教授いただけると幸いです。私自身が読む、という前提ですので、初心者向けであって、何よりもわかりやすい、ということを意識しているのですがいかがでしょうか。最初から読みたい!という奇特な方は「(PC版)リンク」から移動してください。また、検索窓に各段の冒頭部分や文中のワードを入れて検索していただくと、任意の段をご覧いただけると思います(たぶん)。

苦しげなるもの

 苦しそうなもの。夜泣きってことをする赤ちゃんの乳母。想う人を二人持って、あっちからもこっちからも嫉妬されてる男。頑固なもののけの調伏を担当してる修験者。祈祷の効き目だけでもすぐにあったらいいんだけど、そうでもなくって、それでも人に笑われないようにって祈祷してるのは、すごくつらそうだわ。

 無闇やたらと疑う男に、すごく想われてる女。摂政か関白に仕えてて、もてはやされてる人だって、安心はできないでしょうけど。それはまあいいでしょう。気持ちがイライラしてる人もね。


----------訳者の戯言---------

「ふすべらるる」という語が出てきますが、「ふすぶ」の受動態です。漢字では「燻ぶ」です。いぶす、くすぶる、くすぶ、くすべる、ふすべる、などと読めるようですね。燻製の燻です。スモークですね。スモークサーモンとかスモークチキンとかの。現代は、いぶす、くすぶる、という言い方になることが多いです。

ここでの意訳は、「思いがくすぶる」とすると、イメージしやすいですね。つまり「不快や残念な気持ちを抱く」「スッキリしない」「モヤモヤする」。意味は「嫉妬する」となります。で、受け身形ですから、「嫉妬される」という意味になります。

しかし、二股かけて、両方から愛想尽かされてるわけではなく、両方から嫉妬されてるっていうのは、ある意味幸せなわけで、苦しそうなのそれ?とも思いますけどね。修羅場、刃傷沙汰にならないことを祈るだけです。

先日も書きましたが、源氏物語六条御息所みたいに、生き霊になって相手の女性を呪い殺す、などというのもまあ、かなり怖いですけどね。けど、あれ、当の光源氏は無傷なわけで。

逆に、嫉妬深い男に想われてる女子。これもつらいですね。イメージするのはストーカーです。これはつらいというか、むしろ怖い。

一の所、とあるので、「一か所」のこと?と、最初は思ったんですが、調べてみたら、「一の人」のことですと。
ん? ところで、「一の人」って何? 
朝廷の儀式で第一の席につくところから、摂政、関白、または太政大臣左大臣の異称。ということです。
時めく、というのは、「もてはやされる」ということらしいですね。

この段は、苦しそうな人、つらそうな人、ですね。
概ねわかるんですが、途中で中途半端に「一の所」にいていい気になってる感じの人のことなどを出してくるから、ピントがズレてきています。いかにも苦しそうなものを、もう少しグイグイと、畳みかける感じで書いておけばよかったと思いますね。


【原文】

 苦しげなるもの 夜泣きといふわざするちごの乳母(めのと)。思ふ人二人もちて、こなたかなたふすべらるる男。こはき物の怪にあづかりたる験者(げんざ)。験(げん)だにいち早からばよかるべきを、さしもあらず、さすがに人笑はれならじと念ずる、いと苦しげなり。

 わりなくものうたがひする男にいみじう思はれたる女。一の所などに時めく人も、えやすくはあらねど、そはよかめり。心いられしたる人。

 

枕草子 いとめでたし!

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