きよしと見ゆるもの
きれいに見えるもの。土器。新しい金属製のお椀。畳にする薦(こも)。水を容器に入れるときに透けて見える光の影。
----------訳者の戯言---------
土器ですか。土器がキレイでしょうか、ちょっとよくわかりません。マイセンやヘレンドじゃないんですから。と一瞬思うんですが、当時は素焼きのものは使い捨てだったようで、つまり、いつもキレイだということなんでしょうか。素焼きの質感もいい感じに思えたんでしょう。
鋺(かなまり)というのは、金属製の椀のことだそうです、そのまんまですが。
真鍮にしろ、銅にしろ、銀にしろ、たしかにちょっと使ってると、表面が酸化して酸化銅や硫化銀などの皮膜ができて艶もなくなるし、汚れてもきますから、新しいものに限定してという話です。たしかにピカピカの銀食器とか、きれいですよね。ヨーロッパの貴族に似合いそうですが、日本の貴族も負けてはいません。
薦(こも)は、真菰(真薦/まこも)を粗く編んだむしろだそうです。
平安時代は、この薦に縁をつけたものを「畳」と言ったらしいです。当時の部屋は板張りで、必要に応じてそれを敷いて用いたらしいですね。というわけで、これもこれから使う新しいものはきれいだったんでしょう。
水の流れを透かして見える光というのも、なかなか絵画的。物質ではなく、光彩であるというところがポイントです。
というわけで、この段は、キレイなもの、それも清潔感、新鮮さのある綺麗さを4つ挙げています。
前の段もそうでしたが、最後に異質なものを持ってきて締める、あるいはオチをつけるというのが、清少納言のテクニックなのでしょう。
【原文】
清しと見ゆるもの 土器(かはらけ)。あたらしき鋺(かなまり)。畳にさす薦(こも)。水を物に入るるすき影。