枕草子を現代語訳したり考えたりしてみる

清少納言の枕草子を読んでいます。自分なりに現代語訳したり、解説したり、感想を書いています。専門家ではないので間違っていたらすみません。ご指摘・ご教授いただけると幸いです。私自身が読む、という前提ですので、初心者向けであって、何よりもわかりやすい、ということを意識しているのですがいかがでしょうか。最初から読みたい!という奇特な方は「(PC版)リンク」から移動してください。また、検索窓に各段の冒頭部分や文中のワードを入れて検索していただくと、任意の段をご覧いただけると思います(たぶん)。

はしたなきもの

 きまりが悪いもの。別の人を呼んだのに、私だわ…って思って出てった時。物なんかをいただく時だったらもっとバツが悪いわね。たまたま他人の噂話なんかしてdisってたのを、小さい子どもが聞いてて、当の本人がいるのにそれを話し出しちゃうのも。

 悲しいことなんかを人が話し出して、泣いたりしてるのに、ホントすごくかわいそう!なんて聞きながらも涙がすぐ出てこないのも、めちゃくちゃきまり悪いわ。泣き顔を作って、悲しげな雰囲気を演出したって、全然上手くはいかないのよ。すばらしいことを見聞きしたりすると、すぐに涙がどんどん溢れ出てくるのにね。


----------訳者の戯言---------

「はしたなし」は、きまりが悪い、ばつが悪い、という意味だそうですね。不似合いなとか、中途半端な、とかの意味もあるらしいです。漢字で書くと「端なし」だそうです。

「呼ばれたと思って出てったら、お前じゃねーよ」だった話、「子どもは空気読めねーよな」っていう話、「カワイソーと思ってても、必ずしも涙が出てくるわけではなーい」という話です。

最後のは、別にいっしょになって泣かなくてもいいのに、と思います、はい。自然体でいいと思うんですけどね。
たとえば、家族のお葬式でも、泣かない人は泣かないものです。それを薄情とは思いませんし。バツ悪いとも思いませんけどねぇ。清少納言バツは悪い、いくら装ってもだめよね、というメンタリティです。んー。


【原文】

 はしたなきもの こと人を呼ぶに、我がぞとてさし出でたる。ものなど取らするをりは、いとど。おのづから人の上などうち言ひ、そしりたるに、幼き子どもの聞き取りて、その人のあるに言ひ出でたる。

 あはれなることなど人の言ひ出でうち泣きなどするに、げにいとあはれなりなど聞きながら、涙のつと出で来ぬ、いとはしたなし。泣き顔つくり、けしき異(こと)になせど、いとかひなし。めでたきことを見聞くには、まづただ出で来にぞ出で来る。

 

桃尻語訳 枕草子〈上〉 (河出文庫)

桃尻語訳 枕草子〈上〉 (河出文庫)