はしたなきもの
きまりが悪いもの。別の人を呼んだのに、私だわ…って思って出てった時。物なんかをいただく時だったらもっとバツが悪いわね。たまたま他人の噂話なんかしてdisってたのを、小さい子どもが聞いてて、当の本人がいるのにそれを話し出しちゃうのも。
悲しいことなんかを人が話し出して、泣いたりしてるのに、ホントすごくかわいそう!なんて聞きながらも涙がすぐ出てこないのも、めちゃくちゃきまり悪いわ。泣き顔を作って、悲しげな雰囲気を演出したって、全然上手くはいかないのよ。すばらしいことを見聞きしたりすると、すぐに涙がどんどん溢れ出てくるのにね。
----------訳者の戯言---------
「はしたなし」は、きまりが悪い、ばつが悪い、という意味だそうですね。不似合いなとか、中途半端な、とかの意味もあるらしいです。漢字で書くと「端なし」だそうです。
「呼ばれたと思って出てったら、お前じゃねーよ」だった話、「子どもは空気読めねーよな」っていう話、「カワイソーと思ってても、必ずしも涙が出てくるわけではなーい」という話です。
最後のは、別にいっしょになって泣かなくてもいいのに、と思います、はい。自然体でいいと思うんですけどね。
たとえば、家族のお葬式でも、泣かない人は泣かないものです。それを薄情とは思いませんし。バツ悪いとも思いませんけどねぇ。清少納言はバツは悪い、いくら装ってもだめよね、というメンタリティです。んー。
【原文】
はしたなきもの こと人を呼ぶに、我がぞとてさし出でたる。ものなど取らするをりは、いとど。おのづから人の上などうち言ひ、そしりたるに、幼き子どもの聞き取りて、その人のあるに言ひ出でたる。
あはれなることなど人の言ひ出でうち泣きなどするに、げにいとあはれなりなど聞きながら、涙のつと出で来ぬ、いとはしたなし。泣き顔つくり、けしき異(こと)になせど、いとかひなし。めでたきことを見聞くには、まづただ出で来にぞ出で来る。