枕草子を現代語訳したり考えたりしてみる

清少納言の枕草子を読んでいます。自分なりに現代語訳したり、解説したり、感想を書いています。専門家ではないので間違っていたらすみません。ご指摘・ご教授いただけると幸いです。私自身が読む、という前提ですので、初心者向けであって、何よりもわかりやすい、ということを意識しているのですがいかがでしょうか。最初から読みたい!という奇特な方は「(PC版)リンク」から移動してください。また、検索窓に各段の冒頭部分や文中のワードを入れて検索していただくと、任意の段をご覧いただけると思います(たぶん)。

むとくなるもの

 カッコ悪いものっていうと…。潮が引いた干潟に乗り上げてる大きな船。大きな木が風に吹かれて倒されて、根を上に向けて横倒れになってる様子。卑しい身分の者が従者を咎めてるのも。人妻がつまんない嫉妬なんかして、身を隠してたんだけど、彼が絶対に探し回って騒ぐはず、って思ってたようだけど、そんなこともしないで憎ったらしくも平然と過ごしてるもんだから、そんな風に旅に出たままでいるわけにもいかなくって、自ら出てきたの。


----------訳者の戯言---------

「むとくなる」は「むとくなり」の連体形です。漢字では「無徳なり」だそうです。徳が無い、ということなんですね。ということで、「収入が少ない→貧しい」とか「役に立たない」とかの意味があるようですが、ここでは「みっともない、ぶざま、カッコ悪い」というニュアンスになると思います。

「えせもの」は漢字では「似非者」です。文字通り「にせ者」の意味なんでしょうけれど、つまらない者、くだらない者、身分の低い者、という意味になるようです。例によって、身分差別意識が顕著に出ている語ですね。清少納言の場合、「身分の低い者のくせに」みたいな書き様ですから、気分悪いですね。ほんと、身分の低い者等々を簡単に差別するのは、なんとかならないでしょうか。なりませんけどね。

「かうがふ」は「罪を責める」「咎める」という意味。「勘ふ」と書くらしいです。

先にも書きましたが、「みっともないもの」「カッコ悪いもの」の段です。後半は夫に嫉妬して見せしめに家出したものの、慌てるかと思ってたら、全然なので、すごすごと戻ってくる人妻。たしかにぶざまです。清少納言的には、あたしは絶対そんなことしませんわ、ということなのでしょう。


【原文】

 むとくなるもの 潮干の潟にをる大船。大きなる木の風に吹き倒されて、根をささげて横たはれ臥せる。えせ者の従者かうがへたる。人の妻などのすずろなる物怨じなどして隠れたらむを、必ず尋ねさわがむものぞと思ひたるに、さしもあらずねたげにもてなしたるに、さてはえ旅だちゐたらねば、心と出で来たる。