枕草子を現代語訳したり考えたりしてみる

清少納言の枕草子を読んでいます。自分なりに現代語訳したり、解説したり、感想を書いています。専門家ではないので間違っていたらすみません。ご指摘・ご教授いただけると幸いです。私自身が読む、という前提ですので、「わかりやすい」「初心者向け」となっているとは思いますがいかがでしょうか。最初から読みたい!という奇特な方は「リンク」から移動してください。また、検索窓に各段の冒頭部分や文中のワードを入れて検索していただくと、任意の段をご覧いただけると思います(たぶん)。

里にまかでたるに①

 里帰りしてる時に、殿上人なんかがやってくると、穏やかじゃない噂を人々はするもののようなの。でも私、かなりちゃんと考えて行動してて、むやみに引きこもってるっていう感じでもないから、そんな風に言われたって別に腹も立たないんだけどね。それに、昼も夜も来る人を、何の必要があって「いません」なんて言って、恥ずかしい思いをさせて帰せるっていうの? 帰せるわけないでしょ。
 ホントそんなにめちゃくちゃ仲が良いっていうほどでなくっても、そうやってしょちゅう来るからね。あまりにも煩わしいから、今回は居場所がどこだってことを、広くみんなには知らせなかったのよ。左中将の源経房さまと源済政さまあたりが知っていらっしゃるくらいでね。

 で、左衛門の尉の橘則光が来てお話なんかしていたら、
「昨日、宰相の中将(藤原斉信)がお越しになって、『妹のいる所をいくらなんでも知らないはずないでしょ、言いたまえ』って、しつこく聞いてこられたんで、全然知らないんですよーって言ったんだけど、めちゃ厳しく追及されちゃってね」
なんて言って。
「知ってることを知らないって抵抗するのは、すごくつらかったんだよ。もうちょっとのところで笑いそうになったんだけど、左の中将(源経房)が全然しれーっとした顔でいらっしゃったから、あの人と目が合うと笑っちゃいそうで困ってね、台盤(食卓)の上に海藻があって、それを取ってむしゃむしゃ食べてごまかしてたもんだから、食事の合間に変な物食べてるって、みんな見てただろうなぁ。でも、そのおかげで、君の居場所をどこって言わずにすんだんだよね。笑っちゃってたら、それも失敗に終わってただろうからさ。ホントに知らないんだろうな、って信じ込ませられたのは、good jobだったよね!」
なんて話したもんだから、
「絶対に教えちゃだめ!」
なんて言って。
そしてそれから、だいぶ日にちが過ぎたの。


----------訳者の戯言---------

橘則光清少納言の元夫で、離婚後も兄妹のような付き合いがあった、というのは「頭の中将の、すずろなるそら言を聞きて④」に詳しく書きました。前回よりは少し後年のようで、官職が修理の亮(すりのすけ/しゅりのすけ)から左衛門の尉に異動していますね。

宰相の中将の藤原斉信は、前段「かへる年の二月廿余日」、前々段「頭の中将の、すずろなるそら言を聞きて」の主人公でした。男前でおしゃれな、才能あふれるエリート公卿です。こちらも「頭の中将」から「宰相の中将」に昇進?しているのがわかります。

「あやにくに」は「あやにくなり/生憎なり」=「都合が悪い、厳しい、はなはだしい」の連用形です。

布(め)というのは、「海布/海藻」とも書き、わかめ・あらめ・みるめなど、食用となる海藻の総称だそうです。わかめは現代でも若布、和布とも書きますからね。理解はできます。

さて、今回の話。登場人物は清少納言の他に源経房、源済政、そしてナイスガイ藤原斉信、さらに元夫の橘則光です。どのような展開になるのでしょうか。②に続きます。


【原文】

 里にまかでたるに、殿上人などの来るをも、やすからずぞ人々は言ひなすなる。いと有心に、引きいりたるおぼえはたなければ、さ言はむもにくかるまじ。また、昼も夜も来る人を、何しにかは、「なし」ともかかやき帰へさむ。まことにむつましうなどあらぬも、さこそは<来め>[めく]れ。あまりうるさくもあれば、この度<出でたる所をば、> いづくとなべてには知らせず。左中将経房の君、済政の君などばかりぞ、知り給へる。

 左衛門の尉則光が来て物語などするに、「昨日宰相の中将の参り給ひて、『いもうとのあらむ所、さりとも知らぬやうあらじ。いへ』と、いみじう問ひ給ひしに、さらに知らぬよしを申ししに、あやにくに強ひたまひしこと」など言ひて、「あることは、あらがふはいとわびしくこそありけれ。ほとほと笑みぬべかりしに、左の中将のいとつれなく知らず顔にてゐ給へりしを、彼の君に見だにあはせば笑ひぬべかりしに、<わびて、台盤の上に布(め)のありしを取りてただ食ひに>食ひまぎらはししかば、中間にあやしの食ひものやと<人々>見けむかし。されど、かしこうそれにてなむ、そことは申さずなりにし。笑ひなましかば、不用(=失敗)ぞかし。まことに知らぬなめりと思<し>[え]たりしもをかしくこそ」など語れば、「さらにな聞こえ給ひそ」などいひて、日頃久しうなりぬ。

 

マンガで楽しむ古典 枕草子

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