枕草子を現代語訳したり考えたりしてみる

清少納言の枕草子を読んでいます。自分なりに現代語訳したり、解説したり、感想を書いています。専門家ではないので間違っていたらすみません。ご指摘・ご教授いただけると幸いです。私自身が読む、という前提ですので、初心者向けであって、何よりもわかりやすい、ということを意識しているのですがいかがでしょうか。最初から読みたい!という奇特な方は「(PC版)リンク」から移動してください。また、検索窓に各段の冒頭部分や文中のワードを入れて検索していただくと、任意の段をご覧いただけると思います(たぶん)。

おぼつかなきもの

 心細くなるものというと…。12年の山籠もりをしている僧侶の母親。知らない人の所へ闇夜に出かけて行った時、「あんまり目立っちゃうのもどうかな」って、明かりも灯さないで、それでも並んで座ってるの。

 最近仕えるようになった者なんだけど、まだ彼の人間性もわかってない頃、貴重な物を持たせて、どこかに使いに遣るんだけど、帰ってくるのが遅い時。それから、言葉もまだしゃべらない幼児が、反り返って、人にも抱かれないで泣いてる様子。


----------訳者の戯言---------

12年の山籠もり。これは比叡山延暦寺の「十二年籠山行」というもののようです。めちゃくちゃハードな修行らしいですね。

この行につく者は12年間比叡山に籠り、一度も山を下りることはないそうです。伝教大師最澄の真影に侍って、最澄が今も生きているように仕え、献膳、勤行、清掃を、浄土院から一歩も出ずに十二年間続けるそうですよ。もちろん選ばれた僧侶がトライしますし、特別の尊敬を集める存在になるようですね。
上人のお世話をし、読経し、その他の時間は清掃を続けます。掃除しても掃除しても生える雑草、落ち葉を一人で取り除きます。これを延々と繰り返すのだそうです。厳しー。
もちろん病気になっても途中でやめることができないため、病死する僧侶もたくさんいたそうですね。それは親御さんからすると、この上なく心配に違いありません。

なので、これと比べると他の「不安」など、はっきり言ってどうってことないです。
あっそ、ぐらいの感じです。


【原文】

 おぼつかなきもの 十二年の山ごもりの法師の女親。知らぬ所に闇なるにいきたるに、「あらはにもぞある」とて、火もともさで、さすがに並みゐたる。

 今出で来たる者の心も知らぬに、やむごとなき物持たせて、人のもとにやりたるに、おそく帰る。物もまだ言はぬ児(ちご)の、反り覆(くつがへ)り、人にも抱かれず泣きたる。

 

 

『枕草子』の歴史学 春は曙の謎を解く (朝日選書)