枕草子を現代語訳したり考えたりしてみる

清少納言の枕草子を読んでいます。自分なりに現代語訳したり、解説したり、感想を書いています。専門家ではないので間違っていたらすみません。ご指摘・ご教授いただけると幸いです。私自身が読む、という前提ですので、初心者向けであって、何よりもわかりやすい、ということを意識しているのですがいかがでしょうか。最初から読みたい!という奇特な方は「(PC版)リンク」から移動してください。また、検索窓に各段の冒頭部分や文中のワードを入れて検索していただくと、任意の段をご覧いただけると思います(たぶん)。

にくきもの③ ~家にても~

 家にいても、宮中でも、会いたくないなって思う人が来たら、寝たふりをするんだけど、私のところのスタッフが起こしに来て、「ぐっすり寝てはるわぁ」って思ったみたいな顔で、揺さぶって起こそうとするのが、すげームカつくんだけど。新参の女子職員が、先輩を差し置いて、わかったような顔で教えたげるみたいなこと言って、後輩を世話するのも、すごくヤなものね。

 私が今付き合ってる人が、元カノのことを褒めたりなんかするのも、だいぶ前のことではあるんだけど、やっぱ嫌だよね。ましてや、今も進行形だったとしたら、とっても心配。でも、逆に、そんなに全然思わないケースもあったりするんだよね。

 くしゃみをして呪文を唱えるの(もヤだ)。だいたいその家の男主人でないのに、そんなでっかいくしゃみをするなんて、めっちゃ憎たらしいわよ。

 蚤もすごく腹立つ。衣の下で跳ねまわって、持ち上げるみたいにするの。犬が集団で長々と遠吠えするのも、不吉な感じがして嫌なもんだわ。

 開けて出入りするとこを閉めない人、すごいムカツクわ。


----------訳者の戯言---------

3回に分けて読んできました、にくきもの。

やはりこれもアンチ「をかし」の一つです。
憎ったらしいもの、嫌なものということでしょうか。もう少し細かなニュアンスで言うと、イラっとする、ムカつく、腹立つ、ヤな感じ、なんかが含まれると思います。

原文で「いぎたなし」と出てきます。調べてみると「寝汚し」「寝穢し」と書き、「ぐっすり寝込んでいる」という意味だとわかりました。眠り込んでいる様子が見苦しかったのでこういう言葉ができたのだそうです。

鼻ひて。くしゃみをして、ってことをこう言ったんですね。知りませんでした。詳しく述べると、くしゃみすることを「鼻をひる」「鼻ひる」と言ったらしいです。「ひる」は「嚏る」と書いたようで、「嚏」一字で「くさめ」「くっさめ」などと読めるらしいです。現代語でも「くしゃみ」は「嚏」です。勉強になりました。クイズとかに出そうですね。宇治原やカズレーザーはわかるでしょうか。林先生は知ってると思いますが。

しかし、くしゃみをして呪文を唱えるというシーンは今ならかなりめずらしいです。これも「あるある」なんでしょうか。呪文を唱えること自体、そんなあるの? ポピュラーなことなんですか? あるんですか、そうですか。

ま、いろいろと「にくきもの」、あるということですね。

先輩をさしおいて後輩を指導する新入り(-_-メ)
元カノを褒める男<`ヘ´>凸
くしゃみしながら呪文唱えんなよ(-"-)
ノミ(-_-〆) 犬の遠吠え(-_-〆)
開けっ放しにすんなや(`_´;)

今の表現方法で書くとこんな感じでいかがでしょうか。


【原文】

 家にても、宮仕へ所にても、会はでありなむと思ふ人の来たるに、そら寝をしたるを、わがもとにある者起こしに寄り来て、いぎたなしと思ひ顔にひきゆるがしたる、いとにくし。新参の、さし越えて、物知り顔に教へやうなること言ひ、後ろ見たる、いとにくし。

 わが知る人にてある人の、はやう見し女のことほめ言ひ出でなどするも、ほどへたることなれど、なほにくし。まして、さしあたらむこそ思ひやらるれ。されど、なかなかさしもあらぬなどもありかし。

 鼻ひて誦文する。おほかた、人の家の男主ならでは、高くはなひたる、いとにくし。

 蚤もいとにくし。衣の下にをどりありきて、もたぐるやうにする。犬のもろ声に、長々と鳴きあげたる、まがまがしくさへにくし。

 開けて出で入る所、閉てぬ人、いとにくし。


検:にくきもの

 

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