枕草子を現代語訳したり考えたりしてみる

清少納言の枕草子を読んでいます。自分なりに現代語訳したり、解説したり、感想を書いています。専門家ではないので間違っていたらすみません。ご指摘・ご教授いただけると幸いです。私自身が読む、という前提ですので、初心者向けであって、何よりもわかりやすい、ということを意識しているのですがいかがでしょうか。最初から読みたい!という奇特な方は「(PC版)リンク」から移動してください。また、検索窓に各段の冒頭部分や文中のワードを入れて検索していただくと、任意の段をご覧いただけると思います(たぶん)。

2019-09-01から1ヶ月間の記事一覧

森は

森は…というと、浮田の森、うへ木の森、岩瀬の森、立聞の森。 ----------訳者の戯言--------- 浮田の森は、奈良県五條市今井町荒木山の荒木神社の森のことを言ったのだそうです。「浮田杜」または「浮田の杜」と書かれたようですね。このあたり一帯の荒木神…

関は

関っていうと…。逢坂の関、須磨の関、鈴鹿の関、岫田の関、白河の関、衣川の関。ただごえの関(ただそのまま越えるだけの関)は、はばかりの関(躊躇する関)とは、比べようがないなって思うわ。横はしりの関。清見が関。みるめの関。よしよしの関っていうの…

いひにくきもの

言いにくいもの。人からの便りの中に身分の高い方のおっしゃった言葉なんかがたくさん書かれてるのを、最初から最後まで全部言うのは難しいわ。こっちが恥ずかしくなるくらい立派な人が、物なんかを送ってきた時の返事もね。大人になった子どもの思いがけな…

見苦しきもの

見苦しいもの。っていうと、衣の背中の縫い目を肩の方に寄せて着るの。また、抜き衣紋の着方をしてるのもね。 慣れてない人の前に子供をおぶって出てきた人。僧侶や陰陽師が紙冠を着けてお祓いをしてるところもだわ。 色黒で醜くって添え髪をした女と、髭面…

方弘は、いみじう人に笑はるるものかな

方弘(まさひろ)はすごく人に笑われる人なのよ。親なんかはなんて思って聞いてるかしらね。 方弘ときたら、お供をしている者の中からとってもデキる人を呼び寄せて、「どうしてこんな者に使われてるんだい? どう思ってるの?」なんて言って、笑うの。 衣装…

はるかなるもの

気が遠くなるもの。半臂の緒をひねるの。陸奥の国に行く人が逢坂の関を越える頃。生まれた赤ん坊が大人になるまで。 ----------訳者の戯言--------- 半臂(はんぴ)というのは、袍(ほう/うへのきぬ=上着)と下襲 (したがさね) との間につける袖のない短い…

二月つごもり頃に

二月の終わり頃、風が強く吹いて、空がものすごく黒くなって、雪が少し降ってる時、黒戸に主殿司のスタッフが来て、「やって参りました」って言うもんだから、近寄ってみると、「これは(藤原)公任の宰相殿からです」と渡されたのを見てみると、懐紙に、 少…

殿上より、梅のみな散りたる枝を

殿上の間から、梅の花が全部散っちゃった枝を「これはどうですか?」って言ってきたから、シンプルに「早く落ちにけり」って答えたら、その詩を声に出して唱えて、殿上人が黒戸にすごくたくさん座ってるのを、帝がお聞きになって、「まあまあ良い歌なんかを…

淑景舎、東宮に参り給ふほどのことなど⑨ ~日の入るほどに~

日が沈む頃に帝が起きられて、山の井の大納言(藤原道頼)を呼び出して、お着物を整えさせなさって、お帰りになるの。桜襲の直衣に紅色の衣が夕日に映えてる様子なんて、畏れ多過ぎてこれ以上書くのがはばかれるほどでね。山の井の大納言は、定子様たちの腹…

淑景舎、東宮に参り給ふほどのことなど⑧ ~松君のをかしうもののたまふを~

松君がかわいらしくお話しされるのを、みんな誰もがカワイイ~ってお褒めになるの。「中宮のお子さまってことで、みんなの前に披露しても悪くはないだろうね」なんて関白殿はおっしゃるんだけど、ホント、どうして定子さまに今までお子さまのご誕生がないん…

淑景舎、東宮に参り給ふほどのことなど⑦ ~しばしありて~

それからしばらくして、式部の丞の何とかっていう人が、帝からのお使いとして参上したから、御膳宿りの北寄りの部屋に、褥(=敷物)を差し出して座ってもらったんだけど、中宮さまは返事を今日は早くお出しになったのね。で、出してた敷物もまだ片付けてな…

淑景舎、東宮に参り給ふほどのことなど⑥ ~あなたにも御膳まゐる~

淑景舎さまにもお食事が配膳されました。「うらやましいね、皆さま方には全部出されたようだ。早くお召し上がりになって、爺さん、婆さんにお下がりを下さいよ」なんて、一日中、冗談ばっかりおっしゃってるうちに、大納言殿(藤原伊周)と三位中将(藤原隆…

淑景舎、東宮に参り給ふほどのことなど⑤ ~御膳のをりになりて~

朝食のお時間になって、定子さまのヘアメイク担当が参上してね、女蔵人たちがお料理のために髪をアップにしてやって来る頃には、隔ててた屏風も押し開けちゃったから、隙間からのぞき見をしてた私みたいな人は隠れ蓑を取られた気がして、物足りなく、やりき…

淑景舎、東宮に参り給ふほどのことなど④ ~御手水まゐる~

で、お清めの水が差し上げられるの。あちらの方(淑景舎の方)のは、宣耀殿、貞観殿を通って、童女2人と下仕4人で持って参るようだわね。唐廂(からびさし)よりこちら側の廊下には女房が6人ほど待機してるの。狭いってことで、半分はお送りをして、あとは…

淑景舎、東宮に参り給ふほどのことなど③ ~さて、ゐざり入らせ給ひぬれば~

さて、定子さまが擦り膝でお入りになったから、そのまま屏風に寄り添って覗いてたんだけど、「良くないわ、後ろめたい行いだわね」って、聞こえるかのようにこっそり言う人たちもいて。おもしろいわね。障子がとても広く開いてるから、中の様子はすごくよく…

淑景舎、東宮に参り給ふほどのことなど② ~まだこなたにて~

まだこちらで定子さまが御髪なんかのお手入れをしてる時、「淑景舎の方は見たことがあるのかしら?」とお聞きになったので、「まだですが、どうしたらお目見えできます? お車寄せの日、後ろ姿をちょっとだけなので」って申し上げたら、「その柱と屏風のとこ…

淑景舎、東宮に参り給ふほどのことなど①

淑景舎の方(定子さまの妹君、原子さま)が東宮に入内なさった時のことほど、なんて素敵な!ってことはなかったわね。一月十日にお入りになって、お手紙なんかは定子さまと頻繁に交換し合ってたんだけど、まだ直接姉妹がお顔を合わせることはなくって、二十…

雨のうちはへ降る頃

雨が毎日降り続く頃、今日も降ってるんだけど、お使いとして式部省の丞(じょう)の藤原信経が定子さまのところに参上したの。例によって敷物を差し出したら、普段よりも遠くに押しやって座ってたから、「誰のためのもの?」って言ったら、笑って、「こんな…